恋愛対象にするにはもったいない!「一番近い後輩」が最高ポジション

年齢が近い、高身長爽やかイケメンの人事担当。高校を卒業したばかりの小娘が好きになるには、充分すぎた。
いつから好きだったのか、はっきりとは思い出せない。でも多分、一目惚れだった。
健康診断のために病院まで人事担当が送迎することになったが、私は彼の運転する車に乗った。その時の彼の第一印象は、「優しいお兄さん」だった。
入社してからも彼と関わることは度々あった。入社式、新入社員研修、社内イベント。彼が誰とでも楽しそうに話す姿や、てきぱきと仕事をこなす姿を見て、どんどん好きになっていった。
同期は私の好意を知っていたので、飲み会に彼を呼んでくれたりした。LINEを交換して、やり取りして、時には電話もした。がむしゃらに、真っ直ぐにアピールした。でも、脈がある感じは全然なかった。
三年間片思いを続け、片思いの状態が苦しくなった。そしてついに告白した。
付き合いたいとかは思わなかった。ただ、自分のことをどう思っているのか知りたかった。彼の口からそれを聞ければ諦められると思った。
結果、振られた。後輩として大事に思っていると言われた。少し前から彼女がいる、とも。
これでただの先輩後輩になれると、どこかでほっとしていた。
もちろん振られたことはショックだったし、しばらくは引きずった。カラオケで失恋ソングを歌う毎日だった。でも、きっと振られることは心のどこかでわかっていた。そのうちに、彼のことはただの先輩と思えるようになっていた。
だからといって、私が半年後に人事部への異動を命じられるとは、夢にも思わなかった。
給湯室で彼と二人になったとき、私はまず弁明した。
「人事を希望した訳じゃないですからね!」
「好きで人事に来る人なんていないよ」
彼はまるで何もなかったかのように笑っていた。
仕事のほとんどは彼から引き継ぎを受けた。二人で出張にも行った。何から何まで粘り強く教えてくれた。
そして私は、今度は先輩として、彼のことが大好きになった。
彼とは何度も飲みに行ったし、オフィスでPCの電源を切った後に何時間も話したことも一度や二度ではない。時には仕事論や会社の将来について真剣に語り合い、時には男女の恋愛観の違いについて熱く語り合った。何かとメンタルが崩れがちな私に、仕事との付き合い方を教えてくれたのも彼だった。
彼が本音で話してくれる度に、ある思いが大きくなっていった。
「この人は恋愛対象にするにはもったいない!」という思いだ。彼女には言えないブラックな部分も沢山見せてくれた。決して浮気などの倫理に反することではないが、男性の恋愛観のリアルを教えてくれた。こんな面白い話を沢山聞けるなら、「一番近い後輩」というポジションは美味しすぎる。
彼とはどう間違っても付き合うことはない。そんな安心感があるからこそ、お互い何でも話せる。
だからあえて、今こそ言いたい。大好きだと。
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