大学の後輩から突然の連絡。少しずつ距離が縮まり、脈ありだと確信

私には3年ほど片想いしている人がいた。しかし連絡が途絶え、そろそろ潮時かなと立ち直りはじめたころ、大学の後輩男子から「今夜飲みに行きませんか?」と急に連絡があった。
バンドサークルで出会った彼は3つ年下。接点は多くなく、2人で飲むのも初めてだ。

しかし最近、私がSNSを投稿すると他愛ないコメントを頻繁にくれていたので、身に覚えがあるお誘いではあった。

少し迷ったが、片想いを忘れなきゃという思いと、年下男子と2人でご飯に行く機会が今までなかったため、好奇心から行くことに。
思っていた以上に話が盛り上がり、居酒屋で4時間くらい大学時代のことから仕事のこと、映画の話をして、楽しく過ごした。彼女はいないみたいだった。

それから毎日LINEをするようになって、私は教えてもらったラジオ番組を聴き、後輩くんがハマっているアイドルの曲を流しながら彼の好物のガパオライスに初めて挑戦してみたりした。

2回目のデートは渋谷で3軒はしごして、終電がなくなったので、2人で漫喫で眠った。
「おやすみなさい」と私の頭を撫でる後輩くんの手はとても優しくて温かくて、ちょっと泣いた。
3回目は恵比寿の小洒落たレストランでディナー。後輩くんが明日は用事があるからと、早めの解散。別れた後「本当はもっと一緒にいたかったです」とのLINEが届き、これは脈ありサインだと私は確信した。

金曜の夜。家に来た彼の確信に迫ると「まだ分からない」と保留された

そこから数日経った、ある週の金曜23時。「いまから家行っていいですか?」と後輩くんから電話が!

気になる人からの「今から会えない?」が何より大好物な私は、頭の片隅で勢いでそうなるのはダメだ……と考えながらも自宅訪問を快諾してしまった。

映画を見ながらお酒を飲み、1本見終えたところで寝ることに。ベッドの中でそういう雰囲気になり、少しずつ事が進んで行ったが、最終段階に及びそうになったとき、私は「その前にちゃんと話したい。私は付き合いたいと思ってるんだけど、どうしたい?」と確信に迫った。

後輩くんはまだ分からないと保留にしたがったので少し驚き、じゃあどうして家に来たのかと問いただすと、「実はずっと好きな人がいて、その人に最近振られたばかりで。でも先輩のことちゃんと考えたいと思って今日は会いに来たんです」と言うのだ。
彼のことを「優しくていい子」と思っていた私は、同時進行でしかも“2番目の女”にされていたことに傷付き動揺し、怒ってしまった。後輩くんは「先輩のこと、本当にかわいいと思ってます」と、私を抱きしめた。

恋をしていた訳じゃない。作り出した虚像に酔っていただけだった

一人になってからも、もちろん気分はサイアク。こんな日はとことん虚しい気分に浸りたい……と、イヤホンを耳に押し込み、吉澤嘉代子の『残ってる』を流した。

朝帰りする女の子の心情を歌った曲で、歌詞がリアル。片想いの人の家から帰る道で、たくさん聞いていたっけ。

まだ泣いたら元気になれるよ私……と自分を励ましながら曲を再生していたが、驚いたことに、私の渾身の片想いソングは全く胸に響かず、涙も出なかったのだ!

そう、私は後輩くんに恋をしていた訳ではなく、「大学の後輩と数年越しの再会で……」といった設定や、「年下との恋愛」の新鮮さ、そして「純粋無垢な心優しい男の子」という私の中に作り出した後輩くんの虚像に惑わされ、酔っていただけなのだった。

自分を惑わすものに、騙され、流され、進む恋もあると思うが、29歳の私は「忘れられない恋」や「好きで仕方ない」といった経験もいくつかしてきたから、虚像の恋は、私の目を欺くことができなかった。

そんな「大人になって自分の気持ちに素直に向き合い、ちゃんと恋してる」私を誇らしいと思う反面、後輩くんの「優しい手」だけは本物だったから、彼をちゃんと好きになれなかったことがちょっぴり悲しくもあった。

あとから思い返してみると、後輩くんもきっと私のこと好きじゃなかった。何度も「あ、私の話に興味ないんだな」と感じることがあったからだ。彼も私と同じモヤモヤを抱えていたのかな。

勘違いから始まる恋もあるというけれど、真面目すぎる性格の私と後輩くんでは、それはありえなかった。そういう点では、似たもの同士だったようだ。
そのうち、一人の先輩として、後輩くんの恋の相談にも乗りたいし、教えてくれたラジオ番組は私の毎週の楽しみになったから、またその話で盛り上がりたいな……と今では思う。