モラハラと激務で眠れなくなった。それでも諦めなかったから今がある

私は5年前、離婚した。
付き合っているとき、元夫はとても優しかった。思いやりにあふれた人だと感じ、1年半の交際を経て結婚を決めた。
交際期間は本当に楽しく、「この人と一緒に年を重ねていくのだろう」と信じて疑わなかった。
しかし、結婚後、様子が変わった。
家事は一切しないのに、私のやることには全てダメ出し。すぐに怒り出し、人として言ってはいけないようなひどい言葉を浴びせられる。
いわゆる「モラハラ」だった。
私も気が強いため、最初は言い返していたが、次第にエスカレートし、毎日怒声を浴び続けるうちに気力が奪われていった。
ちょうどそのころ、職場でも大きな変化があった。
異動先で担当することになった業務は膨大で、歴代の担当者は日付が変わるまで残業していた。私も例に漏れず、朝8時に出勤し、帰宅は深夜。休日も出勤しなければ仕事が終わらなかった。
しかし、残業代には制限があり、働いても半額も支払われない。一方、同じ職場で働く人たちは、業務量が少なく、定時で帰宅していた。
誰もがこの業務を避けていて、異動してきたばかりの私に押し付けられた形だった。
毎日、誰もいなくなった暗いオフィスで一人仕事をする。
家に帰れば、元夫に罵られる。
そんな日々を過ごすうちに、眠れなくなった。
眠れない日が続くと、頭がぼうっとして、仕事に集中できない。文字が頭に入ってこなくなり、大好きな読書もできなくなった。言葉が出てこず、人と話すことが億劫になった。そして、何もしていないのに涙が止まらなくなった。
「もう無理だ」
私は離婚を決意した。
仕事の負担を軽減してほしいと当時の課長に相談することも決めた。
結果、離婚を切り出した元夫とは揉めた。
けれど、争う気力もなく、元夫がいない間に荷物をまとめ、こっそりと家を出た。
仕事の相談は、もっとひどい結果になった。
家庭と仕事の両立が難しく、精神的に追い詰められていることを伝えたにもかかわらず、課長からの返答は「大変なら業務効率化を考えてみては?」だった。さらに、離婚を考えていることを周囲に勝手に話されるという信じられない仕打ちを受けた。
この人を頼るのはやめた。
その後は、涙をこらえながら、無心で仕事に取り組むしかなかった。
休職も考えたが、生活費を稼がなければならないし、一度休んだら社会に戻れなくなるのではないかという不安が強かった。転職も考えたが、当時の精神状態でうまくいくとは思えなかった。
だから、ただ耐えた。
1年後、離婚が成立した。 調停の手続きに入ったころ、元夫から「調停や裁判はやめてほしい」と連絡があり、示談で決着がついた。
仕事のほうは、毎年異動希望を出し続けたが、叶うまでに3年かかった。それでも今は異動が叶い、休日を犠牲にしなくてよくなった。
少しずつ生活に余白が生まれ、元気を取り戻してきた。
悩みながらも生活を諦めなかった今、新たなパートナーがいるし、仕事では昇格もした。
あれだけ心身ともにボロボロだったのに、毎日を必死に生きてきた自分が積み上げてきた過去があるから、今がある。
あのころの不安や悲しみでいっぱいだった自分に、「十分頑張っているよ。そのままでいいんだよ」と抱きしめてあげたい。
今でも、元夫や当時の課長への恨み節は出る。
でも恨んでしまうのは、当然の心の反応であり、自分が弱いわけでも、悪いわけでもない。
離婚が珍しくなくなった今、私のような思いをした人は少なくないだろう。
働く女性が増えた時代、ハラスメントやブラックな職場環境に悩む人も多いはず。
誰もが多かれ少なかれ、悩みを抱えながら生きている。
けれど、そんな悩みを抱えながらも、私たちは毎日を必死に生きている。
私は強い。そして、頑張る女性たちはみんな強いのだ。
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