書き留めて、描き留めて。些細な幸せをかき集めながら生きてゆく

静かな朝。
いつもより空が近い、そんな朝。
ビルの隙間から差し込む光に細くなる目、上がる口角。
コーヒー香りが体を包む。少しずつ心が満たされていく。
シフト勤務から日勤に変わり1ヶ月、日々ピーラーで身も心も削りながら時間を過ごしていた私のHPはもはや0と同等。
きっと仕事がない方が苦痛で仕方がない私だ。暇をしているよりかはマシなのだろう。
それにしても世界の国料理バイキングに強制参加させられた挙句、咀嚼するのも間に合わない中でテーブルの上に山盛りの料理が置かれている気分だ。
いつから1人万博チャレンジをしていたのだろうと錯覚する。
脳は満腹なのに心が飢えている。
お風呂に入れたらそれだけで満点。
平日よりも細かい頻度でアラームをかけ明日の私を信じて瞼を閉じる。
カーテンの隙間からうっすらと漏れる光。
格闘すること数十分、体を起こした私の勝利は確定した。
静かな洋楽から少しずつアップテンポな曲へ。
咀嚼しきれなかった料理に振り向きなんてしない。
平日に捕まった私の救出劇としては最高のスタート、そんな土曜の朝である。
大好きなアイドルの曲を聞く。
3月からつけ始めた一行日記、溜まった日を一日ずつ埋めていく。
一人、また一人と私が集まっていく。
まだまだ足りない。
Ipadとすっかり年季の入った本を開く。
たかが1ヶ月、されど1ヶ月。仕事以外での数すくない私の進歩。
デジタルイラスト。
今年の裏目標、イラストレーターとしての副業を成立させる。
世のイラストレーターの方に袋叩きにされても仕方がない浅ましい目標である。
やってみることに意味があるだろうと思いつつ、なんだかんだ重い腰が上がるまで4ヶ月。
慎本真さんの参考書を片手に出来るだけペンを取った1ヶ月。
電車の中で描いたのか?と思えるほど震えていた線がいつの間にか真っ直ぐになり。
坊主頭だった人間に髪の毛が生えた。
少しずつ溜まっている作品を見返すたびに感じる目覚ましい進歩。
継続は力なりという言葉を理解したい人がいればぜひ私を呼んで欲しい。
時間経過とともに変化する私の作品をお見せしよう。
4月の終わり、GWに入る前にインスタグラムのアカウントを一つ追加した。
なんとか顔だけは人間として成立するようになった私のイラスト。
色も何もない線だけのシンプルなイラスト。
自分の機嫌は自分で取るとは言ったものの、誰かに認めて欲しいのも事実で。
一丁前にサインなんか作っちゃったりして。
投稿されている数はまだ10枚にも満たない。
それでも一つ、また一つといいねがつく。フォロワーが増えたりする。
イラストの進歩に一人、いいねで一人、フォロワーが増えて一人。
アイデンティティを感じるたびに一人ずつ集まっていく。
溢れた分は平日用に貯金をして。
一つ一つは些細なことで、日々の激しい流れに飲み込まれては消えていく。
それでも忘れずにかき集めては瓶の中に入れていく。
私という人間を私自身が大切にできること、大きくても小さくてもいい。
私は最高に幸せになれる。
人間の脳はどうしてもネガティブなことばかりを記憶するようで。
書き留めないと何が嬉しかったのか、そもそも嬉しいことなんてあったか。
強烈なもの以外はあっという間にかき消されて無くなってしまう。
しかしよく目を凝らせば私たちは幸せに包まれているのだ。
朝日を浴びながらコーヒーを飲めること。
大好きなアーティストの曲を聴きながら空を眺めること。
自分のイラストに他人が共感すること。
こうしてエッセイとして私を表現できていること自体もまた幸せなのだ。
すっかり冷えたコーヒーを飲み干しおかわりを買いに行く。
時刻はまだ9時すぎ、まだ始まったばかりの最高の土曜。
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