「可愛い」って言われるのがなんだか苦手。

だんご鼻に左右非対称の目、メイクも適当。髪も器用にセットしてないこんな私のなにが可愛いの? あなたの方が何十倍も可愛いじゃないって思っちゃう。なんだかバカにされてるような惨めな気分になってしまう。言った当人にそんなつもりは全くないんだけど。

私は「どうせ自分が可愛く着飾ったって無駄だ」って決めつけていた

ある日、彼が私に「もっと可愛くなれるよ。今でも十分可愛いけど、磨けばもっと可愛くなれる」って言った。

友達にこの話をしたら「なにそれ。めっちゃ失礼じゃん。怒った方がいいよ」って言ったけど、私はそうは思えなかった。彼は嫌味とか半端な気持ちでこんなこと言ったわけじゃない。真剣に私と向き合ってくれたからこそ、発した言葉なんだと思ったから。そして、その言葉に私は少しだけ勇気をもらった。

今までは、どうせ自分が可愛く着飾ったって無駄だって決めつけて、そもそも可愛くなる努力っていうものをしたことがなかった。可愛いアクセサリーを見つけて買ってみても、それを付けてる自分を鏡で見ると「なんだか気持ち悪いな」と思っていた。

心の奥深くには「可愛くなりたい」「周りの友達みたいにおしゃれを楽しみたい」って気持ちがあったのに無理矢理押し込めてた。「可愛くなれるよ」って信じて言ってくれる人がいるなら、女の子たちが当たり前のようにしてることをちょっとだけしてみようかなって思った。

「もっと可愛くなれる」という彼の言葉を信じて、キャンペーン開始

それから私は、可愛くなる努力をしてみることにした。名付けて“可愛くなろうキャンペーン”。

自己流だった眉の整え方やメイクの仕方を見直してみたり、おすすめの化粧品を友達に聞いて色々揃えてみたりした。数年ぶりに髪も染めて、今までしたことない髪型に挑戦してみたり、ヘアアイロンの使い方を練習したりもした。「どうせつけても似合わないし」と思って棚の中に追いやってたイアリングもつけてみた。

キャンペーン開始から2ヶ月。周りの人から、「あれ?なんか可愛くなったね」なんて言われるようになって、嬉しくなった。おしゃれすることの楽しさもわかるようになってきた。自分にも少し自信がついて、これからなんでもできるような気になったりしちゃって。自分のことも少しだけ好きになれた。

彼が私にくれた「可愛くなる勇気」は、別れの決断も与えてくれた

今、私のそばに彼はいない。二人で一緒にいる将来が見えなくて、私から電話で別れを切り出した。私たちが描く将来像にズレがあることに気づいていながら、見て見ぬふりをしてた。もっと夢を見ていたくて。

いつかはちゃんと彼と話さなきゃってずっと思ってたけど、現実と向き合う勇気がなかった。今までの私は。

でも、彼が私に勇気をくれたからこんなことになっちゃったんだよ。

これから先、ちょっとパワーアップした私と彼が会う日はきっと来ないんだと思う。別れた頃は、たくさん後悔していっぱい泣いた。「これでよかったのかな?」って何度も考えた。可愛くなろうって頑張ってた自分に虚しさを感じた。

でも、別れを決めたのは自分。誰かのためじゃない、自分のために可愛くなって何が悪い。いつか「この決断は間違ってなかった」って胸を張って言えますように。一度きりの人生、もっと自分のために進んでいこう。