私の去年立てた目標の一つに「パンを一から作る」というものがあった。一からというのは、市販のミックス粉などは使用せず、強力粉から自分で捏ねてつくるということだ。

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そんな目標を立てたのは、私がパンが大好きだからだ。食べるのはもちろん好きだが、パン屋さんのあの香り、ふわっと可愛いあの形、とても穏やかで温かい気持ちになる。だから、いつかは自分の家でパンを焼いてみたい、我が家を焼きてのパンいっぱいの香りにしたいと思っていた。

昔から思ってはいたのだが、発酵や捏ねなど作るのは難しそうで手が出せずにいた。ネットで作り方を見ると「失敗しない発酵の仕方」「パンが膨らまない5つの理由」など、難関が沢山あることを感じさせる記事が沢山ある。
やってみたいことを後回しにしている気がしたので、昨年「今年中にやりたいこと」として目標とした。

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私はまず、シンプルな丸パンに挑戦した。何度もレシピ動画でイメージトレーニングをして挑んだのだが、まず生地がまとまらず、手や台に引っ付きまくって心が折れかけた。なんとか粉を足して固め、次は捏ねる工程。楽しみにしていた工程の一つだったが、こんなに重労働だとは知らなかった。汗をかきながら15分間捏ね続けた。その後一次発酵、形成、ベンチタイム、二次発酵、焼き……と想像していた以上に苦戦した。苦戦はしたが、なんとかパンらしく膨らんで、いい香りも楽しめた。

出来上がったパンは形も焼き色も不恰好だったがなんだか愛おしかった。そしてそんな不恰好なパンを彼は「パンじゃん!!すごっ!」って褒めてくれた。
それがすっごく嬉しくて、それからいろんなパンに挑戦した。
ベーグル、ベーコンエピ、チョコパン、ウインナーパン、メロンパン……どれも簡単ではなかったが作っていくうちに少しずつ感覚やコツを覚えて、初めの頃よりは上達できたと思う。

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今では気が向いた時や、作ってみたいレシピを見つけた時におうちでパンを焼いている。いい香りがするし、膨れて大きくなったパン生地が可愛くて、形成はふわふわで気持ちがいい、そんな自己満足な理由でパン作りを楽しんでいる。正直食べたいというより、作るのが楽しくてたまらない。
そんな自己満足なパン作りを彼は全肯定してくれている。いつも「めっちゃ美味しい!」「最高!」と笑顔で沢山食べてくれる。その笑顔も私をとても幸せな気持ちにする。

先日、久々にハード系のパンが食べたくてベーコンエピを作った。何度か作ったことがあるので順調に焼き上げることができた。ベーコンエピには、中にマヨネーズを入れるのがお気に入りだ。焼き上がると香ばしいマヨネーズとパンのとってもいい香りがする。焼いて満足した私だったが、彼は「これ1番美味しい!パン屋のパンより好き!毎日食べたいくらい!」と嬉しい言葉をくれた。

彼の喜ぶ顔が見られる素敵な趣味を見つけられたようだ。