なかなか寝付けない夜の回数は、人並み以上の私。次の日どうしても重要な外せない用事があるなら軽い睡眠剤を飲んで音楽で寝られない焦りをかき消して無理矢理にでも睡眠時間を確保する。そうでもしないと、次の日は寝不足でてんでダメになるからだ。

寝れない理由はさまざま。私が眠れない夜が増えたのは、看護師の実感試験前の大学4年生の冬あたりから。そこから、合格して社会人になった今でも不安なことがあると眠れないことが多々ある。

◎          ◎

1日が終わってしまうのが嫌で、どうにか引き伸ばしたくて寝たくなくて、スマホの画面をだらだらみてしまう。ブルーライトをたっぷり浴びた目は冴えて、いざ体のために寝ようと思っても寝付けない。悪循環に陥ることも多々あった。

忘れられない、寝られない日の思い出。その日も夜に来る謎の人生への焦りで眠れなかった。その日もダラダラ惰性でスマホを見てしまいそうだったけれど、思い切って外に出てみることにした。

冬と春の境目のようなその夜は、少し冷えたけれど、上着を羽織れば耐えれるくらいで。その日は何を思ったか、小さい頃父に連れられ、マンションの屋上で星を見に行ったことを思い出し、どうせ寝られないのなら星を見ようと住んでいるマンションの屋上へと向かった。

屋上はわたしだけで、暗くて少し怖かったけれど、それよりも春の訪れをを感じる優しい風と、ブルーライトなんてない静かな夜空に懐かしく癒される気持ちが大きかった。

汚れることも厭わず、私は屋上で寝転んだ。どうせ寝られないのだから、もうどうなってもいいやと、ぼーっと夜空を眺めていた。だんだんと目が慣れてきて、見える星の数がひとつ、また一つと増えていく。

星たちは何も言わないけれど、ただそこに在るだけで、少しだけ心が軽くなった。眠れない夜にも、意味があるのかもしれないと思えた。

星を眺めているうちに、胸の奥で渦巻いていた焦りが、少しずつ静まっていくのを感じた。何も変わらない夜空が、変わり続ける自分に「それでいい」と語りかけてくれているようだった。眠れない夜はつらいけれど、こうして立ち止まって、心の声に耳をすます時間なのかもしれない。寒さに少し震えながら部屋に戻ると、布団がやけにあたたかく感じられた。目を閉じると、不思議とすっと眠りに落ちた。

◎          ◎

その日から、人生に焦って眠れない日は星を探す。宇宙の大きさに比べたら私の人生の悩みも眠れない夜も、些細なことだと信じて。

星に包まれて眠ったあとは、暖かい朝日が私を迎えてくれるから。眠れなくても焦らずに、嫌なことがあっても悲観せず、生きていきたい。