アラサー、既婚子持ちのわたしには今でも忘れられない人がいる。
女子校育ちだったわたしに初めて彼氏が出来たのは大学一年生の夏だった。
その彼とは丸四年付き合い彼との思い出を思い返せばくすっと笑ってしまうような楽しかった記憶しかない。
とにかく優しくてユーモアがある、わたしの一目惚れだった。

当時わたしは看護学生、彼は開業医の息子で医大生だった。俗に言うお坊ちゃんだけど全くそう感じさせないような良い意味で庶民感があるところも好きだった。
休みの日はとにかく遠出をした、写真なんて数えきれないぐらい撮った。
部活終わりのラーメン、デザートにアイスを買って食べながら夜道を散歩するだけで幸せだった。

◎          ◎

そんな中わたしが先に就職をし彼以外の男性と接する機会が増えた。当時恋愛経験の少なかったわたしは彼以外の男性がすごく新鮮で目新しく見えた。
彼にこれといった不満はなく楽しく過ごしていたけど、恋愛経験が浅く未熟なわたしは彼との恋愛にマンネリを感じてしまい、わたしから別れを切り出した。

でもなんて言って別れたら良いのか悩んでしまい、ただ単にマンネリという以外に彼に不満はなく別れたい。その一言しか言わなかった、というか言えなかった。
当然彼はいきなりなんで?という感じで、別れてからも、もう一度やり直せないかと言ってくれた。
でもなぜかその時わたしはあまり後悔しなかった。なんなら次の恋にうきうきしてた記憶さえある。最低だな、すごく後悔してる。

◎          ◎

別れてからわたしは何人か彼氏ができたけどどの人とも続かなかった。
彼よりも面白い人、大人な世界を見せてくれる人、かなり年上の人とも付き合った。
でも彼以上の人と出会うことはできなかった。
よりを戻したい、そんな身勝手でわがままな考えをもったことも何度もあった。
最低だってわかってるのに、自分から別れを切り出したのになぜか忘れることができなかった。

どうしても忘れることができず3年前、連絡をした。

これまでわたしが別れを切り出したのに、ずっと忘れることができずにいたこと、よかったらご飯に一度行きたい、と連絡した。
そして彼とご飯に行くことができた。
わたしはすごくすごくうれしかった。

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二人の思い出のお店に行った。
純粋に彼と話したかった。ただそれだけだったはずなのに、心のどこかでよりを戻したという気持ちもなかったといえば嘘になる。
別れ際のタクシーの中で彼は、あの時俺ずっと忘れることができなかったけどちゃんと吹っ切れたから、と何の嫌味でもなく純粋に言った。
お互い幸せになろうなって。

わたしはなぜか目に涙が浮かんでしまい堪えきれなかった。涙がバレないように咄嗟に窓の方を向いた。
あぁ、完全に終わったんだなって。
わたしもちゃんと前向かなきゃと思った。

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わたしはのちにお見合いで知り合った男性と結婚し二人のかわいい子ども達に恵まれた。
彼と結婚していたらどうなってたんだろうと考える日もある。まだ消せていない彼との思い出の写真を見た日もある。
わたしは既婚者、この先彼とどうこうなることはないし多分会うことも連絡することもないかもしれないけど、わたしはこの先もずっと忘れることはできないんだろう。
この気持ちを彼に話すこともできないのでここにわたしの思い出として綴ろうと思う。

わたしの好きだった人。
元気にしてますか、どうか幸せになってください。心から幸せになってほしいと願ってます。
このエッセイを見ることはないかもしれないけど、ずっとずっと応援してます。
わたしに素敵な恋愛をさせてくれて、ありがとう。