「シオリもやってみなよー、このマッチングアプリいいよ」

今話しているのは高校時代からの女友達。モデル。「どうしたらイケメンと出会えるの?!」という私の軽い発言に対して、マッチングアプリを勧めてきた。マッチングアプリはいろいろとあるが、このアプリは他よりも経営者や超絶イケメン、いわゆる「ハイスペ男子」とつながりやすいようだ。

ふむふむ、とりあえずやってみるか、とその場でインストール。マッチングアプリの神様、できればイケメンでお願いします。
数名とメッセージのやりとりを行い、意気投合した彼がいる。私より1つ年上。国家公務員。住んでいるところも近い。えー、最高じゃん?しばらくメッセージのやりとりをして、「今度の週末会おうよ」送信、っと。

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次の週末。本当に会うことになった。写真は見た感じ格好良いけど、実物とんでもないブサイクが来たらどうしよう。そんな心配をよそに、目の前に現れたのはビビるほど恰好良い男の人だった。

身長178cm、モデル体型、某俳優に似ている整った顔立ち。服装もシンプルでオシャレ。え、完璧すぎない?むしろ相手が私で大丈夫そう?マッチングアプリで見た写真通りの、超絶イケメンが現れた。

初めてのデートはランチ。お腹いっぱいになったあとふらっとウィンドウショッピングをして、カラオケ。歌も上手くてびっくりする。欠点が見えないまま、カラオケも存分に歌い、飲みに行くことに。

飲みに行ったら行ったで、共通の趣味を見つけてしまい、大いに盛り上がった。たくさん話をしすぎて、終電を逃してしまった私。これは、ワンナイトあるかもしれない……と頭をよぎるが、彼は手を出してこなかった。

「この人といると楽しい」「また会いたい」「あー、好きかも」

彼も同じことを考えてくれていたようで、抱きしめながら「次会ったとき、ちゃんと言わせてください」と言ってくれた。

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次に会ったのは約1ヶ月後。夜景のきれいなところで告白された。
「好きです、付き合ってください」ベタなセリフだけど、それがより嬉しかった。「はい、よろしくお願いします」恋ってこんなに楽しいのだと、ウキウキした。

しかし、そう上手くはいかなかった。

付き合った期間は数ヶ月。その間にリスケされたデートの予定は数知れず。前日のドタキャンは通常運転。当日のドタキャンもそこそこあった。ちょうど良いのか悪いのかのタイミングでコロナという疾病が流行しており、「感染が怖いから」「社内でコロナが出たから」などを理由に会ってもらえなかった。

会いたいのに会えない週末が続く。あ、この人は釣った魚に餌をやらないタイプだなと察した。「やっと会える」と思っても当日連絡が返ってこない。夕方になってようやく返信がきたと思っても「ごめん、寝てた」。

でもときどき会ってくれて、不安になっている私を見て「ちゃんと好きだよ、安心して」と優しく言ってくれるので、私は混乱した。遊びなら遊びって、割り切った関係の方が楽なのにな。好きって言わなくていいのにな。なんで好きって言ってくれるんだろう。あ、やっぱり顔カッコイイ。好きだー。

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ある日のデート、1ヶ月ぶりにやっと会える!と喜んでいた私。それと同時に、「本当に会えるのか?」「また寝過ごされて終わってしまうのでは?」となんだか嫌な予感がしていた。まさか嫌な予感が当たるとは。

待ち合わせは彼の地元。「明日楽しみだね」「やっと会えるね」とLINEで話していたのに、当日彼は来なかった。

3時間待ちぼうけ。「ごめん寝てた」「今から行くわ」の言葉が欲しくて、3時間も待ってしまったが、結局来てはくれなかった。電話しても出てくれない、諦めて帰ったら、帰りの電車は止まってしまうし、もう最悪な日でしかなかった。

家に帰ってからふと嫌な予感がした。「もしかしてブロックされているのでは……?」スタンプを送って確認してみると、本当にブロックされていたのだ。

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「あはは、彼氏に捨てられました」

優しい友達や上司になぐさめられ、割とすぐに吹っ切れた。別れ話もできないクソみたいな男、格好悪い。でもクソみたいな楽しい数ヶ月をありがとう。私みたいな最高な女捨てたやつなんて、どこかで痛い目に遭っていてほしい。本命の彼女か奥さんがいたのか知らんけど、バレて振られるとか。ほかの捨てた女によってSNSで晒されるとか。

私のことを大切にしてくれない人なんてもういらない。そんなやつ、私から離れてくれてありがとう。見た目は格好良かったけど、格好悪い人。二度と私の前に現れませんように。