私には好きな人がいた。
学校終わりによく会っていたけど、コロナ禍で対面授業がなくなると、会わなくなり、ついにLINEが返って来なくなった。
その次のバイト先での恋も実らなかった。
失恋までが早いため、私の好きな人はコロコロ変わる。でもいつだって、誰かを好きになる時は本気だから、終わった時に傷つかないなんてことはない。コロナ禍だし、もうリアルな出会いは尽きた。
ええぃ、マッチングアプリを入れてしまえ……。
私にはマッチングアプリというと悪いイメージしかなかった。いわゆるワンナイトの相手を探すためのツール。今まで彼氏がいたことのない私には、まだそんな大胆な考えはできない。
セックスは好きな人としたい。二十歳を過ぎた女だが、理想と処女は捨ててない。
そうして私はマッチングアプリを使い始めた。
始めて1週間、私には気になる人ができた。LINEを交換しやりとりをしていたが、当時は緊急事態宣言下。会えない日々が続いていると、その人とはある時急にLINEが途絶えた。
私はその人からの返信を一週間待ち続けたが、女友達に「マッチングアプリの人は繋がりやすく切れやすいんだよ」と言われ、現実とまたもマッチングアプリに戻った。
相変わらずのコロナ禍。私の中では大きな変化があった
その後に出会った彼は21歳、一つ歳上の公務員。身長が180cmもある。私は彼とLINEを交換した。
彼とやりとりをして2週間、好きな食べ物の話になった。そして同時に「緊急事態宣言が終わったらご飯でも行きたいな!」とお誘いが。緊急事態宣言で世の中は、相変わらずコロナが多く出たり、減ったりしていたけれど、私の中では大きな変化があった。
彼と出会った。そしてそのうち会うのだ。
やがて緊急事態宣言が明け、彼と連絡を取り始めて1ヶ月半、4月初頭、桜新町駅。
コロナ禍の出会いらしく、マスクで顔がはっきりわからない者同士が出会った。
デミグラスソースのオムライスを食べ、お散歩デートをし、1週間後に江ノ島でまた会うことになった。
「緊急事態宣言が終わったら」。その約束と、週末の連絡を支えにした
江ノ島では、シラス丼を食べ、神社に行き、えのすいに行った。その後、二人で海を眺めた。次の話を彼はしない。
彼とは今日ここまでの縁なのだろうか……。
帰りの電車が到着すると、席がかなり空いていた。私は彼の隣に座り、勇気を出して「次も会う?」と小さい声で聞いてみた。
彼は大きく首を縦に振った。その瞬間が今でも忘れられない。
愛おしかった。良かった~。
時折向かいの窓に浮かぶ、 背の高い男の人の隣にちょこんと座った私が、私じゃない人を見ているみたいだった。
その次は2週間後、鎌倉で会った。しかしこれがゴールデンウィーク前最後のデートだった。緊急事態宣言がまたも出て、私は彼に会えない日々が続いた。
それでも彼はLINEのやりとりを続けてくれていて、そのうち週末に電話をするようになった。
緊急事態宣言が延びるたび、私はいつ彼からLINEが返ってこなくなるのかと怯えたが、ある時の電話で彼は、「まぁ気長に待つわ~~」と言ってくれた。
信じられない言葉だった。2ヶ月も会っていないのに、3回しか会っていないのに。
「緊急事態宣言が終わったら箱根に行こうね」
その約束と週末の電話とLINE。なんとか耐えた。2ヶ月も会わずに。
2ヶ月越しのデート。会えない時間が育んだもの
6月中旬、長かった宣言が解除された。そして、私はやっと彼に会えた。
一日ドライブデートを楽しみ、帰り際、彼は車を止めた。
「渡したいものがある」と彼は言い、二人で後部座席に座り直した。彼は会えない間に迎えた、私の21歳の誕生日を祝ってくれたのだ。
私はプレゼントを開け、そして閉め、端におき、彼にくっつくように座った。手を繋いだ。
肩を寄せ合って座っていた時、彼は私に好きだと言ってくれた。
彼は初めて会った時の話とか、2ヶ月間会えなくて辛かったとか、色々話してくれた。私の幸せのキャパは限界を超え、目から溢れた。
会えない間がもどかしく、私が好きだと気づいたそうだ。
彼は繋いでいた手を恋人繋ぎに変えた。