わたしは学生時代、女子校に通っていた。中学1年生の担任の先生は若い男性だった。

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他の先生が授業にきたときに、私の担任の先生が生徒たちから人気が高く、他のクラスの生徒が見に来たり、授業中の声を隣の教室から耳を済まして聞いていたりしていたようで、今回あなたたちの担任になったなんて、先輩方から羨ましがられるよ!と言われた。

数年前から赴任していたようだが、理科の専科や副担任はしていたものの、担任はわたしのクラスが初めてだったようだ。初めて担任という役割を任された、とは思えないような堂々っぷりだった。どちらかというと、わたしたちははじめの頃は舐めていたと思う。みんな、あだ名で呼んでいた。

好きになったきっかけとして、なんとなく覚えているのは、その先生に怒られたことである。両親から怒られたことは多々あったが、家族以外から怒られた経験があまりなく、泣いてしまった。

また、当時、流行っていて好きだった水泳アニメのキャラクターで、その先生に似ているキャラクターがいた。グッズに小さい下敷きがあり、アニメの作中でも着ないような、かなり奇抜な柄の全身水着だったのだ。授業内の問題を解く時間に、先生が机と机の間の通路をぐるぐる回ることが1つの授業で、数回あった。

そのとき、下敷きなのにわざと先生に見えやすい端っこに置いてみたり、なんならわざと落として先生に拾ってもらっていたかもしれない。

もちろん、「このキャラクターとぼく、似ていますね!」なんていう会話が授業中に繰り広げられるわけもなかった。授業後に手についたチョークを職員室付近の1Fで洗う、というルーティンを知っていた。どこかのクラスで授業があれば、1Fのその手洗い場に行けば、その姿を見に行けるのである。

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その年は、わたしのクラスの授業は受け持っていなかったと思うが、そこで会えることをわかっていたため、バレンタインに手作りのクッキーとチョコを渡したこともある。当時の担任のクラスで、その先生にバレンタインをあげていいか聞いた生徒がいたそうだ。「すでにもらいましたから、いいんじゃないでしょうか。」と言ったことで、部活でわたしが好きなことは知れ渡っていたので、わたしがすでにバレンタインをあげたことは、間接的にバレていた。

また、部活を引退した後、ほかの部員の計らいでその先生とわたしがある会に招待してもらったこともある。先生を困らせたのはこのときだけではない。

この翌年、わたしのクラスの授業を担当してもらえなかったが、その年の理科のおじいちゃん先生が分かりづらい授業だったのと、嫌いだったことから全く関係ない好きだった先生に質問しに行っていた。

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これらのわたしの奮闘劇は、若気の至りであり、黒歴史である。いまとなれば、思い出しただけでかなり恥ずかしい……。社会人になって、母校を訪問したときに結婚して子どもも生まれたと聞いた。わたしより年齢が上の卒業生と結婚したと聞いても、特に動揺しないくらいには、わたしも外の世界を色々知っていたのだった。