一目惚れはする人としない人がいるけれど、わたしは圧倒的にする側の人間だ。現在のパートナーである夫にも、もちろん他にたくさんの要素があったし知り合ってからの出来事もあったが、はじまりは一目惚れだった。

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わたしはその頃地方に住んでいて、その日は東京に遊びにきていた。知り合いのCちゃんがお友達とイベントを開くというので共通の知り合いのBさんと一緒に遊びに行った。途中でお昼を食べに行ったりそのイベントスペースに戻ったりして、そこにいる人のほとんどがだいたいCちゃんやお友達の知り合いで占められて、だんだん盛り上がりがカオスになり始めた頃、夫が現れた。

Bさんに、「あれ、てっきり相互フォローだと思ってたよ」と言われるくらい共通項の多かったわたし達はその場でSNSをフォローし合い、イベントが終わってからBさんと3人でファミレスで延々と喋っていた。何を話したかまったく覚えていないが、ずっと笑っていたのは覚えている。

知り合いが多い手前、平静を装っていたし、実際その日夫にはバレていなかったのだが、本当に夫が部屋に入ってきた瞬間、わたしは一目惚れしていた。イベント中もその後も、話せば話すほど理想の人だ!やばい、この人めちゃくちゃ好き!と思ってバレないようにはしゃいでごまかしていた。

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あとあと聞けば夫はたまたまその日用事があって、その帰りに寄れるからという理由でそのイベントに来たらしい。その用事はかなり限定されたもので、つまりそのイベントがあった場所は関東に住んでいた夫にとっても頻繁に行く場所ではなかったのだ。
わたしが東京に来た用事はその前日にあったのだが、それもまた抽選で日が決まったという、なかなか偶然性の高い出会いだった。

それまで告白されて付き合うということにいまいち馴染めず、ちょうどセクシャリティについて迷っていた時期でもあったが、この人に恋人ができてしまったら倒れる!くらいには一目惚れの衝撃が大きく、今思い出すとかなり激しくアタックを続け、数ヶ月後にはお付き合いを始めることになった。コロナになる寸前の頃だった。

当時の悩みは自分がデミセクシュアルなのか、アセクシュアルなのかわからない、ということで、それらのことをブログにつらつら書いていたわたしの告白を、当時の夫はよく受け入れてくれたなあと思う。

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今のわたしは基本的にバイロマンティックで、かつ女性にはリスロマンティックなアセクシュアルなのだが、サピオロマンティック(知性に恋愛的魅力を感じる)でもあるし、ロマンティック性が高い、というと語弊があるかもしれないが、セクシャリティ診断などでは「一目惚れをしますか?/したことがありますか?」という設問がよくある。

個人的には一目惚れしないということがわからないというか、人と出会って数分で、アイドルや芸能人なら写真だけでも、恋愛的に好き/好きじゃないがはっきり、自分の中で確定する。別に必ずしもアイドルや芸能人に恋愛感情を抱くわけではないけれど、外見で好きになる確率はものすごく高い。そのアイドルがどんなに音痴でも、俳優の演技が下手くそでも、でも、外見は大好き、と思う。

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恋愛脳とも違う。古典的な言い方をすれば惚れっぽい、だろうか。ジャンルを問わず、いわゆる推しは多い。でも、複数人に恋愛感情を持っていて浮気しているのとも違うし、わたしがリレーションシップを紡いでいたいと思うのは夫だけだ。

ちなみにわたしはモノに一目惚れをすることはあまりなくて、どうしても欲しい!と思うものがあってもそれがバッグとか、服だとかだったりはしない。直感的にこれは使えそうだ、似合いそうだ、とは思うけれど、どちらかといえば理性的だし、人に対してほど盲目的になることはない。

次に一目惚れすることがあるなら、家で飼える動物がいいな、と思っている。