理論上届かないところにいる元恋人のことが、やっぱりまだ好きだった

このテーマでエッセイの募集がかかったとき、絶対書こうと思いました。書きたいことがたくさんあります。わたしが好きだった元恋人のことについて、正確には今もぼんやり好きな元恋人のことについて。
彼とのことについて書こうと思っていたある日、彼に新しい彼女ができたことを知りました。二度目の失恋でした。昨年の夏に振られて、ギクシャクした時期もたくさんあったけど、なんとなく仲のいい二人になり、私も精神的に落ち着いてきた矢先のことでした。
もう10日経ちましたが泣かずに過ごせた日はありません。頭では「彼とずっと一緒にいるのは無理だった」と思うようになっていましたが、やっぱりまだ好きだったのだ、心は追いついてなかったのだと思い知らされました。
泣きながら、これを書いています。書いてなんになるのかわからないけれど、どこに向かうのかもわからないけれど、私が好きだった元恋人について、言葉にします。
彼と出会ったのは大学1年生になってすぐのことです。なんか知らないけどずっとあれやこれや話していて、変なボケをして、ちょっとダメなところがあって、でもたくさん本を読んでいて、優秀。警戒心が強く、大して人を楽しませる能力もない私は異性と仲良くなったことがほとんどありませんでしたが、彼は私の壁をぶち破り、すごくすごく近い存在になりました。とっても仲のいい友達でした。
そんな彼と付き合うことになったのは9月のことです。とても嬉しかった。私にとっては初めての彼氏でした。彼と一緒にいるのが好きでした。私はずっと一人でいるのが好きなタイプだと自負していましたが、この距離感の人であれば四六時中一緒にいたいとさえ思いました。
いつからあの楽しい関係性が崩れていったのかよく分かりません。お互い性格が違うのはわかっていました。彼は楽観的で私は悲観的。彼は人生明るく楽しく過ごしてきたし、過ごしたいと願っている一方で私は精神的に落ち込んだ経験があり、人生の陰を見てきたし、それを埋めてほしいと願っている。
彼は地元に帰りたいし子供が欲しい、私は大学のある関西に住み続けたいし子供は欲しくない。多分この違いがだんだん浮き彫りになり、どうにか修正しようとして私が論理で訴えて彼が拒否する。そういうことが多くなったと思います。
私は最悪、彼の地元についていってもいいと思っていましたが、彼は地元に帰ることも子供を持つことも譲ってくれませんでした。私は彼と一緒にいることを大前提に生きていましたが、彼はおそらく重荷になるのであれば私はいなくていいと思っていたのだと思います。
付き合って2年11ヶ月15日の日、別れた方がいいんじゃないかとLINEがきました。彼は私の特別でしたが、私は彼の特別ではなかったわけです。切り捨てた方がいいと思われたわけです。人間的に嫌いになったわけではないそうですが、一度あんなに近くにいた人をいなくてもいい、と思う感覚は今の私にはまだ分かりません。
もしかしたら、彼にとってはそんなに近い存在ではなかったのかも。もしそうだとしたらそれが一番悲しいです。私のただの勘違いだったのでしょうか。
書いてきた通り、違いがたくさんあったのは明白です。私が本来恋人に求めていることを彼が持ち合わせていたわけでもありません。合わなかったのは分かっています。
でも、私は彼のことが存在として、好きでした。面白いからとか笑わせてくれるからとか落ち着くからとか、好きになる入り口には色々理由があるかもしれませんが、そういう理由があった上での好きではなく、なんで好きなの?と聞かれてもうまく答えられないような好きでした。
これは抜け出すのが難しいです。あんなことされた、こんなことされた、あんな嫌なところもあったという、好きでなくなる理由をいくつ上げても、もう論理の届かないところにいるのでぼんやり好きなままです。困ったものです。お手上げです。
でもやはり私は代替可能だったのです。One of themでした。悲しい。この気持ちはどこへ行くのでしょうか。きっとしばらくは彼のことをぼんやり好きなまま、日々を過ごすのだと思います。
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