恋愛ソングは好きだ。
特に思い浮かぶのは花花さんのさよなら大好きな人、Le Coupleさんのひだまりの詩。
無意識に思い浮かぶ曲が別れた恋人を思う曲というあたり過去に執着しているのかと少しだけ苦笑いが漏れる。
片思いのなんともいえない切なさに胸がときめく曲もこのに多く蔓延るというのに。

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とはいえ、良いのか悪いのか、曲は浮かべど肝心の顔が全く浮かんでこない。
なんとか絞り出して思い出してみれば、世界が終わる勢いで恋愛をしていた20歳頃の私が思い浮かぶ。

もう10年近くも前のことだ。
別れたあと数年は思い出してはセンチメンタルな気持ちになっていたりもした。
今思えば気持ち悪いことこの上ないが、相互フォローをはずした彼のSNSをこっそり覗きに行っては、自分から振っておきながらなぜか心を痛めていたような気がする。
検索するたびに思い浮かぶ失恋ソングを聞いては涙を流していた。
あの頃このテーマについて私がエッセイを書く機会があれば間違いなく彼との思い出を少しだけウエッティに、ドラマチックに書いていただろう。感謝を添えて。

しかしそれも今やすっかり過去の出来事になってしまった。
好きだったことは覚えているがどうやって好きになったかなど全く思い出せない。
100年の恋は冷めるやがて解けて無に還る。
そうしてできた新しい土台の上に人はまた新しく100年の恋を構築していくのだろうか。

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現在進行形で土台がまっさらな私ではあるが、ここ数年は構築しようとパーツを拾ってきてみている
しかしいざ組み立てるとなると、途端に全てを放棄してきたこともまた事実。
恋を構築し、いずれは冷め、そして無に還るというのは言葉では簡単に書けるが現実では途方もない体力と精神力を使う。
時には自分の人生の半分以上を持っていかれる勢いだ。

ちなみに私は前の恋愛の時に半分どころか全部持っていかれた人間だ。
恋愛をして自分を嫌いになり、自分的感覚で言えば人生すら棒に振ろうとした人間だ。
ちょっとやそっとの年月で再び構築しようという気にならないことも納得だと、自分に言い聞かせる。

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本当は構築してみたいし、恋愛という形から得られるものにも興味はある。
それでも構築できないのはすっかり忘れてしまった彼に、そして未だに過去に縛られているからだろうか。

バンジージャンプの前で立ちすくむ自分。
飛ぶ場所が変われば見える景色がかわることもある。
そんなことは頭ではわかっている。
しかしバンジージャンプだからと怖気付いているのだ。

29歳、世間の目が変わるタイミングである。
自分の想像する恋愛というものが少しずつ難しくなっていくのだろうか。
まだまだ年齢に縛られる日本という国をいっそのこと脱出してみようか。
そこまでしてするほど人を好きになることに価値はあるのだろうか。
なんだかんだ言いながら冒険しきれない私の性格だ、日本人に落ち着くのだろうか。
一生悩み続けるのだろうか。
仕事の時はバサバサと物事を捌いていく私が見たら呆れる。
そうやって決まってもないことをぐるぐると永遠に考えている暇があったら一歩足を前に出してみたら?と誰かに背中を押してほしい。

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寝ていたらキスする王子様が現れるような白雪姫思考の恋愛脳。
ここ最近の世間はエルサのような自立した女性が共感を呼んでいるようではある。
世間のためではなく、自分自身のために29歳という年齢をリミットにして恋愛に対する方針を立てるとしよう。後半年、意外と時間は残されていない。