娘を面食いにしないという母の教育方針の賜物。出会えた奇跡に感謝

母の教育方針には“私(娘)を面食いにしない”という目標があったらしい。
恋愛相手はできるだけたくさんの人から選んでほしいという理由で、親の価値観を植え付けないようできるだけ私の前で人のルックスにまつわる感想を述べないようにしていたという。
思えば確かに母親の好きなタイプを知らない(といいつつここだけの話、母が某男性アイドルに対して「あの人は足が短い」だの某ヤンキードラマのイケメンたちを見て「髪は短い方がいいよね」だのとうっかりビジュアルを評したことがあったことを覚えてはいる。それほど親の影響力は大きいのだ)。
そのおかげか、物心ついた時から思春期前半くらいまで、好きなタイプは常に変遷していた。当時私が恋した人は、色白で小柄な近所の男の子、重めまぶたが印象的な俳優、ぱっちり二重でさらさら髪の毛の同級生、黒髪の年上系アニメキャラ、色黒高身長野球部、隣のクラスのおっとり体型男子、インテリ系メガネ漫画キャラ、などなど。
全員「かっこいい」と思って好きになってはいたものの顔やスタイルの系統は全員ばらばらで、自分でもプロフィール帳の「好きな人のタイプは?」「好きな芸能人は?」といった問いにかなり悩んでいた記憶がある。
まわりの友だちに絶対的な異性のタイプや今でいう推しが存在している中、私が限定的なビジュアルの嗜好を持っていなかったことは、ある意味母の狙い通りだったのかもしれない。
学生時代、交友関係が広がり芸能にも詳しくなってくると、あることに気がついた。身近で実際に「いいなぁ」と思っている人に似ていると感じた芸能人のことを好きになるのだ。
たとえば、親しくしてもらっている先輩に少しでも似た芸能人を見つけると、いつの間にかその芸能人のファンになってしまう、という具合。
普段「素敵だな」と思っている人の雰囲気と少しでも似た部分を感じると、昨日までなんでもなかったはずの芸能人が見れば見るほど身近なあの人に似ている気がして、双方に対して心が急接近した。
好意のアハ体験。これまで同様やはり顔タイプは様々で、見た目が似ているとかだけではなく、笑い方などの表情や話し方など、内面が滲み出た部分に面影を感じていたように思う。
現在、私はとある男性アイドルを推している。彼もまた、これまで好きだった人たちとは違う系統の顔立ち。そしてその彼は少し夫に似ている。……おそらくこれも実は逆で、夫に似ているからそのアイドルのことを好きになったのだと推察している。見た目の雰囲気だけではなく、夫が繰り出すユーモアと近いものがあるなと感じてから、どんどん好きになってしまった。
もしも幼い頃に母の好みに影響され、限られたルックスしか好きじゃなくなっていたら、名パートナーの夫と愛おしい推しには出会えなかったかもしれない。
星の数ほどいると喩えられる人口から、良い人と結ばれる機運を高めてもらったと考えると、切実にありがたいことである。
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