私なりの確かな恋を認められなかった。初恋は、後悔で終わった

初恋は、未熟だ。ゆえに気付けるとも限らない。
私の初恋は、好きだと自覚する前に終わった。
小さい頃から、友達が恋している様子が羨ましかった。恋をすると、その人のことをずっと考えたり、些細なことにドキドキしたりするらしい。私もその高揚感を味わってみたくて、人気者の男の子を好きなふりをしていた。しかし、見せかけの恋は、ただ虚しいだけだった。
高校生になった時、ある男の子と偶然一緒に帰り、LINEが続き、デートに誘われた。このままいけば、付き合えるだろうと私は確信していた。私は3回目のデートで彼に告白した。
しかし、正直私は彼のことを恋愛的に好きではなかった。それよりも誰かと付き合うことが大切で、焦っていた。もう、誰かを羨むのは嫌だった。
初めて彼氏が出来た日、私は嬉しさよりも、チャンスを掴めたことへの安堵の方が大きかった。
彼は口下手で、愛情表現も少なかった。呼び名が名字から名前に変わるまで1ヶ月、手を繋ぐのに4ヶ月かかった。付き合う前に夢見ていたときめきは中々感じなかった。
それなのに、周りに釣り合っていないと思われたらどうしようという不安や、恋人らしくしなくてはというプレッシャーばかり感じていた。
そして次第に、もういいか、という気持ちになった。あんなに欲しかったものなのに、こんなに簡単にいらなくなってしまうのかと、少し悲しかった。でもそれ以上に解放されたいという思いが強かった。受験期だったこともあり、勉強に集中したい、などと適当な理由をつけて、私は彼に別れを切り出した。きっと、あっさり了承されるだろうと思っていた。
しかし、私の期待は裏切られた。彼は別れたくないと言い、言葉にするのが苦手なこと、その分行動で示そうとしていたが不十分だったこと、挽回するからもう一度チャンスが欲しいことを、一生懸命伝えてくれた。彼が感情を発露したのは、これが初めてだった。
しかし、私は未熟だった。別れを切り出す側は、優しくなってはいけないと、悪者になるべきだと思い込んでいた。友達にも別れると言ってしまい、今更引き返せないと意地になっていた。私は感情を殺し、彼の言葉に何も感じないよう努めていた。
話を聞き入れようとしない私に、いつもニコニコしている彼は怒り、涙も流していた。それでも、突然別れを切り出した不義理な私を、彼は駅まで送ってくれた。去り際に「楽しかったです。ありがとう」と言い、彼は背を向けて歩き出した。
いつも私が改札に入り振り返ると、彼はまだ居て、手を振ってくれていた。私はいつもの癖で振り返ったが、当然、彼はそこに居なかった。電車の中ではいつも通り音楽を聴き、最寄り駅に着いた。改札を抜け、人気のない道路に出た瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。自分でもよく分からなかった。
別れて涙が出ることで、私は彼のことが好きだったのだと気付いた。寒い中、コートの中に私の好きな飲み物を入れて待っててくれる所とか。何時間も続く私のおしゃべりを楽しいと言ってくれる所とか。
私は、彼にときめきを感じていなかったかもしれない。でも、人として大好きだった。目立たない優しさに、私は確かに心を動かされていて、それは私なりの恋だった。一般的な恋に囚われて、彼のことが見えていなかった。私の初恋は、後悔で終わった。
彼の言葉を聞き入れていたら、彼を好きだと認めていたら、今日が変わっていただろうかと時々考える。時が経つと共に思い出すことは無くなっていくけれど、それでも確かに私の胸には、温かさも苦しさも残っている。
次の人には、大好きだと心の底から伝えたい。そして、あの温かさを、今度は私が愛しい人にあげられるようになろうと思う。
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