もし、「アラサーあるあるランキング」があったとしたら、きっとこんなものが上位にランクインしているはず。毎週のごとく、婚約届の上に指輪が載せられた写真がSNSにアップされる。

アラサー独身にとって、なんだかわからないけど、心をそわそわとさせる、何度もは見たくないあの写真。けれど、実はその写真をある人がSNSにあげてくれないかと心の隅で密かに期待している。私は、そんな自分に少し前から気がついている。

数年前に付き合っていた彼と最初に別れ話をしたのは、私からだった

そのある人とは、私が数年ほど付き合っていた彼だ。彼とは二度別れ話をしたことがあった。一度目の別れ話は、私からだった。その時の私は、別れ話を切り出したら、もう終わりだと思っていた。

それは、付き合う前に恋愛観の話をした際にこんなことを言っていたからだ。「『別れよう』ってどちらかが伝えたらもう終わりだよね。『なんで?嫌だ』とか『話し合おう』ってたとえ言ったとしても、『別れよう』って口にした方は、何度も考えてその言葉を口にすることに至ったんだから、何を言っても考えなんて変わらないと思う」と私が言った。彼も「本当にそうだよね」と言っていたからだ。

幼いなと恥ずかしくなるもなるが、当時そんな価値観を持っていた私とそれに同意する彼。だから、私が別れ話を言ったら話し合いの余地なく別れる。そして、復縁するなんて私にも彼にもありえない考えだと思っていた。

ただ、実際のところは違っていた。別れ話を私が切り出すと、彼は「なんで?」と聞いてきた。彼のことは好きだったけれど、どうしても彼といると苦しいことがあり、「もう無理だから。辛いからと」と子供のように同じ理由だけを言い、お別れをすることになった。

自分から別れを切り出したのに、別れてたった数日後に彼に電話をした

しかし、翌日から想像を超えるほど、自分がどれだけショックを受けているのか知った。涙が止まらなく、いくつも忘れ物をして出かけてしまったり、終日なんだか景色が見づらいと思ったらコンタクトレンズを片目だけ入れて出かけてしまったりしていた。

こんなカッコ悪いことがあってもいいのかと思ったが、自分のプライドよりも、その当時の私にとっては、あまりにもこの状況が辛く耐えられず、別れてたった数日後に彼に電話をした。

「別れたいと思った理由は今も変わらなくて、そのことが解決しないなら付き合っててもまた辛くなるし、傷つきたくないから一緒にいたくない。でも、あなたと別れた今、ちゃんと生活を送れないぐらい辛くて。だから、わがままだし、カッコ悪いけど、まだ同じ気持ちだったら、好きだから一緒にいたい」と伝えた。

もう、話の後半は自分でもこの一連の出来事がばかばかしくて、私も彼も少し笑ってしまっていた。私たちの一度目の別れは、まるでままごとのように、たった数日で終わった。一度言い出したら譲らない、頑固な性格の私が、こんなにあっさり自分の意見を変え、相手にお願いしていることに驚いたが、なんだかほっとした自分がいた。

二度目の別れは、遠距離になることが決まった時に彼から切り出してきた。悲しかったけれど、確かに遠距離になって自分が寂しさに耐えられるとも思えなかったし、すんなり別れを受け入れた。

素直に言えないから、彼が結婚してくれたら次にいけるような気がする

あれから時間が経って思うことは、全てがそんなに大したことではなく、こんな話は、「若いね」と一言でまとめることができる。ただ言えることは、あの時の私は、今よりももっと未熟で、そうやって譲らない考えを通すことで、自分が何者かわからない不安の中から、必死に自分を奮い立たせていたように思う。

一度目の一連の出来事の後の気持ちを今考えると、誰かと共にいるために自分の考えを変えるという経験ができて、ほっとしていたのかもしれない。この荒れ狂う世界を生きていくために、お互いに足りないものを補いながら、そしてお互いに変わっていきながら、共に支えあっていく。

そうやって、誰かと一緒に、柔らかくてふわふわした安全な世界を作る。それが生きていくために必要だとなんとなくわかっていて、それに一歩だけ近づけたように感じてほっととしたのかもしれない。

そして、未曾有の世界にまさになっている今、初めてその経験を共にしてくれた彼に、懐かしさを感じているのだと思う。もっと大人になった私たちが出会ったら、共にこの世界を生きていくために、お互いに努力して、優しい世界を作り出すことができるのではないだろうかと。

でも、彼のことを思うと涙を流して胸が苦しくなる……というわけでもない。ただ、なぜだか、あれから他の出会いがあっても本気で向き合いたいと思う人に出会わない。

「まだ終わらない恋をあなたにしている」と言えない頑固な私は、彼が例の写真をSNSにあげてくれたら、全てを言葉にして、次にいけるような気がして、待ち遠しいのだ。