小学生、中学生の頃、梅雨の時期や、雨が降った時には、私の靴はいつもびしょ濡れだった。 靴を変えても、歩き方を意識しても。(さすがに長靴を履いたら、濡れないけれど)

校則では、長靴は禁止されていなかったように思う。履いてきている子を見た気がするから。でも、あまり多く無かったとも思う。私の場合は、長靴と 普通の靴を持っていくのなんて面倒くさかったからだろうか。いや、靴箱に入らなかったからだろうか。今思えば、別に雨の日だったら、休み時間に外で遊ぶこともないし、体育の時間は体育館だろう。考えれば考えるほど、長靴を履いていなかった理由が思い出せない。

とにかく、雨の日でも常にスニーカーだった。雨の日は大変だ。対して大きくもない傘の下 で、ランドセルやカバン、そのほかの荷物、自分の肩、そして靴。どれを優先して、濡らさないようにするか。鞄の方をおろそかにしてしまうと、学校についてから中の教科書やプリントまで濡れていた。

学校までの通学路、片道10〜20分を、足元に気をつけながら歩いていく。じわじわと靴のつま先から靴の色が濃くなってきて、少しすると、靴の中の足先がひんやりするのを感じた。どんどん濡れる範囲が広がってきて、私の中には広がる絶望。あの、靴の中でグショグショとした感触は、とても気持ちがいいとは言えなかった。学校について1日過ごし、やっと靴下が乾いてきても、帰りにまた履く自分の靴は当たり前にまだ濡れていて、2度目の絶望。

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そんなに頻繁に靴を買い替えることもできないので、雨の日はいつもそんな感じだった。もちろん、どうしたら濡れないか何度も試行錯誤した。ある時は歩き方を意識した。理屈はわからないけど、つま先を下につけるから濡れるんだと思い、爪先を上に沿って出来るだけ地面につけないように歩いてみる。無意味だった。ある時は、傘が靴まで届いてないんだと思い、前気味に傘をもつ。幾分かマシな気はしたけれど、結局は濡れて、かわりにその分背中のカバンがビショビショになった。

中学生の時は、雨の日用に、靴底が少し厚めの、表面がツルッとしたスニーカーも買っても らった。雨の日に履いてみると、断然濡れにくくて安心した。小雨の日には効果抜群!そう、小雨の日には、、、。大雨の日には、検討虚しくも惨敗だった。

比較的濡れにくいそのスニーカーは、むしろ濡れてしまうと、水捌けが悪く、より一層気持ちが悪かった。

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年を重ねていくと、日常であまりにも長靴って感じの長靴を履くことにはより抵抗が出てきた。そこでレインシューズと出会う。

丈はくるぶしほどなので、あまり深い水の中にこそ入れないが、ちょっとやそっとの雨では平気で、長靴よりスタイリッシュ。雨の日の足取りが少し軽くなった。

でも雨の日に特化したその靴は、雨が止んでしまうと一気に重く、通気性が皆無のため、ム シムシと感じる。

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一番最悪なのは、まだ降っていないけど、降りそうで雨予報だから履いていったのに、結果ほとんど振らずに、ただ重くて疲れる靴を履いていただけになった時。

悲しいことに、そんな日々が何年も続いたせいで、私はあまり雨の日が好きにはなれない。

でも自分が濡れない、実害がない分には、家とか車の中で聞く雨音は何だか好きだったりす る。耳に勝手に入ってきてしまう雑音も雨の音でかき消される。雨の日はいつも以上に、自分だけの空間が守られているような気がするからかもしれない。余計な雑音も、話も遮って。 自分の心と向き合う空間のような。

濡れなければ、いいんだけど。そう、濡れなければ、という条件付きで。