落ち着いた大人びた子だと言われ続けてた。中学生になった頃には、大学生に間違われていた。大学に入れたのがうれしく「大学生です」と自己紹介すれば、「4年生?」と聞かれるのが常だった。母とはよく姉妹と間違われた。ずっと母が若いからだと思っていたが、私が老け顔だからだと気付いた時はとてもショックだった。どうすれば年相応の若々しさを吹かせられるか、それが私の長年の課題であった。

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そんな私は最近、年々幼くなっている。それは自分の生育環境に疑問を持ち、家に戻れなくなって、家を出てからだ。老け顔なので30代前半になったら実年齢と見た目年齢が釣り合って、それ以降はしばらく年齢不詳になる予定だった。しかし、実年齢と見た目年齢が釣り合った感じではない。中身も見た目もなんだか幼くなったのだ。

自分の生育環境について、色々と不適切だったと気付いてしまった時、入院先の看護士さんに「おめでとうございます!あなたは今までよく生き延びました。これからは新しい人生です」と言われた。その言葉で視界がパァっと明るく開けると共に、自分はこれから生まれ直して、自分を育て直すのだと思った。それっぽく言うとそうなるわけだが、正直に言うと「あぁ私は生まれたばかりの赤ちゃんなのだ、ばぶ」という感じだった。赤ちゃんひとりでは生活していけないので、赤ちゃんであり、赤ちゃんのお母さんなわけだが。

自分の中の内なる子ども、インナーチャイルドという言葉がある。私はそれがしっくり来ない。自分の中に子どもがいるというより、今まさに私が子どもという感じだ。

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そんなわけで、見た目はアラサー、心は赤ちゃんといった感じで過ごしている。いつでも赤ちゃんというわけではなく、対自分の時、許される時と場所で赤ちゃんになっている。最近は対恋人にも赤ちゃんになってしまっていて申し訳ない。

そうして赤ちゃんとして2年ほど過ごしていて、今は絶賛イヤイヤ期である。自分でやりたいと決めたことでさえ、イヤイヤしており、困惑しまくりである。そして恋人によく「やんやんです」と言っている。こうなると何もかも嫌で嫌で我ながら困ってしまう。子育てしたことがないので、薄らぼんやりとした知識しかないのだが、イヤイヤ期が来たということは順調に精神が発達しているということのような気がする。

イヤイヤ期が来ただけでなく、鏡を見ると、以前の老け顔はどこへやら、なんだか顔も幼くなった。紛れもなく私なのだが、あどけなさが出たというのだろうか。私、こんな顔だったっけ?と不思議に思う瞬間が増えた。ずっと自分は老け顔だと思っていたけれど、もしかすると子供らしくいられなかった影響が表情、顔つきとして現れていただけだったのかもしれない。老け顔は年齢不相応の苦労や抑圧の結果だったのだろうか。

そういえば幼稚園の先生が私のことを「天真爛漫で、子どもらしい子ども」と称していたと聞いたことがある。自分がそんな子だったとは信じがたい。しかし時期的に、その先生の元を離れてから、家庭環境が変わった。最近、その家庭環境の変化について話す機会があったが、話を聞いた専門家に「あなたはヤングケアラーだったんだね」と言われて非常に驚いた。私は落ち着いて大人びていた訳ではなく、そうならなきゃいけなかったのだろう。天真爛漫で、子どもらしい子どもだったのに。

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私は背伸びをさせられていただけだった。それに気付いたところで、子ども時代は返ってこない。だから自分で自分を育て直すしかない。なんで?やんやんです。てな感じなので誰か育ててくれないかな。いや、誰かって誰だか分からないし、嫌だし、産んだ覚えのない人に育てさせるのも嫌だ。そう、なんで産んだ覚えがないのに育てなきゃいかんのだ。もう全部嫌だ。やんやんです。そんなわけで、子育て経験もしくは自分育て経験のある方、イヤイヤ期の対処法、アドバイスをお待ちしております。