大事な友達の結婚式に行けなかった。「ごめん」がまだ言えない理由

大事な友達の結婚式に行かなかった。
それは、お金がなかったから。
始まりは、スマホが壊れたことだった。でも、googleに写真とか連絡先とか勝手に全部保存されてるし、大したゲームもしてなければ引き継ぎが必須なアプリもそんなに入れてない。壊れちゃったけど、LINEさえ上手く引き継げれば問題無いなと思った。
LINEを上手く引き継げなかった。
引き継げ無かったというか、壊れたスマホが全く動かなくなってしまったので、引き継ぎに必要なQRコードだかなんだかも出せず、LINEなんて大事なものに限って外部の何とも連携させておらず、いわゆる詰んだ状態になった。
人生終わった。高校生の時初めて作ってからずっと使い続けてきた私のLINEアカウント。
大好きな友達、先輩、後輩。LINEアカウントをお互いに知っているという事実だけで繋がっている、昔仲良かったけど今はもう連絡を取り合ってない中学の友達。高校の時好きだった先輩。終電付近の時間に大きい駅の通路を通ると必ずいる、カットモデルを探す美容師さん。
何年もかけて蓄積されてきた私の人間関係が、一瞬で全て無くなってしまったと思った。アカウントが無くなるだけで、そのような人達との人間関係が変化したりはしない。のに、思い出ごと無くなってしまった気がして、私はすごくへこんだ。今もなお連絡を今も取っている人達は、どうにかまたアカウントを聞いて登録することはできるんだから別に良いだろうに、連絡を取っていない人達の情報が0になってしまうことの方が寂しいなと思ったのが不思議だった。
へこんでても仕方ないとはわかっていても、へこむことしかできない時もある。アカウント引き継ぎに失敗してから、3日間しっかりへこむことに専念した私は、4日目に別スマホで新しいアカウントを作った。
そこでやっと、数日後に会う約束をしてるAちゃんたちと連絡を取った。
Aちゃん達は高校の時の友達で、仲良し四人組。密に連絡は取り合わないけど、ふと急に連絡しても、当時のテンションそのままで話せる友達。大人になるにつれて、そういう人間関係の存在の大切さとか尊さとか、そういうのが身にしみるようになってくる。
そんなAちゃんから、最近結婚したんだとの報告があった。心から嬉しかった。みんなで口々にお祝いの言葉を喋った。
仲良し四人組の会はいつも通り楽しく過ごし解散。帰宅後、今回も楽しかったありがとうまた次もやろうね的な、よくあるお礼LINEを送りあって終了。
そんな感じで新しいLINEアカウントライフを歩み始めていた私だったが、事件があった。
古いスマホが復活した。
古いスマホが復活するということは、古いLINEアカウントも使える状態になるということ。もう復活を諦めていたとはいえ、いざ復活するととんでもなく嬉しい。
もちろん古いアカウントを今後も使っていきたい。強制的にわかせていた、新しいLINEアカウントへの愛着は、それこそ秒で消え去った。
「新しくアカウントつくったけどこっちが復活したのでこちらに連絡お願いします!ごめんね!」
新アカウントの存在を知っている知り合い各位へ、古いアカウントからみんなに連絡した。スマホも買い替えLINEも引き継ぎ済み。安心しきっていた。
何週間か経った後。削除せずに放っておいた新しいアカウントを気まぐれで開いてみたところで、私の大きなミスが発覚する。
仲良し四人組のグループラインに、数十件の未読メッセージ。
私は、仲良し四人組に古いLINEアカウントが復活した旨を伝え忘れていたのだ。
未読メッセージのうち何個かは、通知として残っていたので、既読を付けずとも読むことができた。読む限り、Aちゃんが結婚式をすること、出席の締め切りはとうに過ぎていることなどが見て取れた。
私は既読を付けられなかった。
Aちゃんは、私のスマホがどうにかしてるからLINEを見れていないのだろうかと手紙も出してくれていた。
が、私は怖くて読めなかった。
この段階で、そういうわけで連絡を確認できていなかったと正直に言えば、もしかしたらまだ結婚式に参加することはできたのかもしれない。
でも言えなかった。今伝えても結婚式に参加できなかったら?怒ってたら?なんて話し出せば良い?何を伝えれば良い?わからない…怖かった。
大事な友達の結婚式に行かなかった。
それは、お金がなかったから。
では無い。
シングルマザーの私が言う「お金が無い」であれば、こんな情けないことをしても、まあしょうが無いかって許してくれるんじゃないかな。暴力的な思考回路で作り出した空想の理由。
大事な友達の結婚式に行かなかった。
それは、お金がなかったから。
では無い。
私はまだ、ごめんが言えていない。
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