謝罪したい人を挙げるなら、中高生の時に付き合っていた彼氏だろう。
彼は中学の同級生で、3年間クラスが同じだった。初めは特に気になる存在でもなかったが、教室でもずっと一緒に喋ったり、委員会も同じだったりしたため、次第に仲が深まっていった。

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そんな中学2年生の終わり頃。11月半ばの寒い日だった。放課後、教室を出る前に突然彼から告白された。初めは戸惑ったが、心の底から嬉しくて彼からの告白を受け入れた。
晴れて付き合うことになったのだが、当時はお互いに携帯電話を持っておらず、連絡を取る手段は、家族のスマホを介してだった。
そんな状況下では、連絡はスムーズにできるわけがない。
それなのに、学校ではお互いを意識し過ぎて話すことができない。中学生の思春期というものは厄介だ。

しかし、たまに二人だけになった時、彼は教室で伝えられない気持ちを、彼なりに私に伝えてくれた。
「本当に好きなんだ」「好きになってよかった」
不器用な彼なりの気持ちの表現が嬉しかった。と同時に、私は心のどこかでそう言われるのが当たり前のように感じて、いつも「ありがとう」と簡単に返すだけだった。
思い返せば、私は彼に自分から「好き」と一度も言っていない。

高校になると、学校も別々になる。お互い自分のスマホは所持したが、連絡の頻度はそんなに高くなかった。たまにやりとりするのは、月ごとの記念日LINEと、デートの誘いくらいだった。
しかも、ほとんどは彼が送ってくる。遊びの誘いも、必ず応えているわけではなかった。私は、部活や他の用事が忙しいと言って全く会わなかったのだ。

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そうなると、彼の気持ちも次第に遠ざかってゆくのは自明である。
高校に入学して1、 2ヶ月が経ったある日、彼から別れ話をされた。その時、泣きながら「嫌だ」と言って聞かなかった私に、彼は驚いただろう。
その時初めて気づいた。心のどこかで、彼は私のところにずっといてくれると勝手に思い込んでいたということ、気持ちは伝えなければ伝わらないし、伝えなければ相手の気持ちは無くなるということ。

大好きだったのに、突然別れ話をされてしまった私はただ泣きじゃくってしまい、結局その場での別れ話は無かったことになり、交際は続くことになった。しかし、一度冷めてしまった彼の気持ちは再び戻るわけはなかった。

それ以降、私から月ごとの記念日LINEを送ることになり、私から遊びにも誘うようになったが、結局あまり会えなかった。あの一件から、立場が完全に逆になったのである。

その状態で交際を続けても長続きするわけがなく、初めの別れ話から約半年後。ちょうど2年目の記念日LINEを私が送ると、「もう別れよう。付き合っている意味がわからない」という返事が届いた。
1回目に言われた時ほど悲しくなかったのは自分でも意外だったが、流石の私も了承し、こうしてあっけなくフラれたのだ。

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別れてからは、また友達として今も仲良くしているが、時々付き合っていた時のことを思い出す。今はお互い違うパートナーがいるため、思い出したところでなんともないのだが……。
中高生の恋愛だから、と言われてしまえばそれだけだが、あの時想いを伝え続けてくれた彼の気持ちを無下にしてしまったことは、申し訳なかったし、変に意地を張ったり、彼からの気持ちに驕ったりして、私から「好き」と一言も伝えなかったことは謝罪したいと思っている。

しかし、彼との一件で、好きな相手にはしっかり想いは伝えようと思ったし、会いたいなら会わないといけないと教えてもらった。

高校生活の前半で別れることになったが、彼も私みたいな人間と早めに別れて正解だったと思う。だが、こんな私みたいな人間に2年も時間を割かせてしまったことは、申し訳ない。もうあの時の自分みたいにはならないと誓う。
私を人間的にステップアップさせてくれた彼には感謝すると共に、彼の今の幸せをただ願うばかりである。