高校入学を機に長かった髪を小学1年生ぶりショートにした。そして初めてのツーブロック。正直これといったきっかけはなかった。強いて言えば、ツーブロックもポニーテールも駄目だという中学校の校則の反動なのかもしれない。

ショートにしても髪を短くしたいという気持ちは消えず、ショートからマッシュになるまでさほど時間はかからなかった。

かっこよくなりたい。そんな気持ちはあってもそこまで短くする決定的な理由はずっとないまま。

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ただ1つあったのは″誰かに″ ″何かに″反抗したいという気持ち。それが誰なのか、何なのかは当時分からずにいた。

目立ちたくないと思いながらずっと生活してきた私が″女の子″にしては目立つ髪型だった。きっと自分のことを知ってくれている周りの人たちは驚いただろう。

でもそれが男の子だったら?

性別さえ違えば決して目立つ髪型ではない。女だから、男だからと決めつける誰かに、女だから、男だからと今まで決めつけられてきたイメージというものに反抗したかったのかもしれないと今は思う。

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制服はスカート、シャツにはネクタイではなくリボン。髪型はマッシュ。そんな見た目の自分に正直違和感があった。それでも自分がやりたいマッシュとツーブロックという髪型を続けたまま私は高校を卒業した。そして同時に髪を染めてはいけないという校則から解き放たれ、卒業式が終わった約3週間後には金髪になった。卒業して2年目の今も金髪だ。

たまに母から聞かれる「何で金髪なの?」の言葉には2年目の今も未だにしっかりと答えられない。でも、ショートからマッシュにした時と同様に″誰かに″ ″何かに″反抗したいという気持ちは残っている。そして今は″強く見せたい″という気持ちもプラスされている。

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過去に生きていた人たちが長い長い年月をかけてつけた男女のイメージが、現在生きている人たちにも受け継がれている。たった1人が髪を短くしたところで、たった1人が「そのイメージを無くそう」と叫んだところで、そう簡単に無くならないだろう。長い年月をかけて男女のイメージがついたように、それを無くそうとしたらそれ以上の年月がかかるだろう。

そのイメージがなくなる日が来たとしてもその時代に私はもう生きていないかもしれない。理解のない人たちの耳にはきっと届かないだろう。その人たちは″女優″が″俳優″と呼ばれるようになったなんとなくの違和感にも気づかないのかもしれない。

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マッシュ、金髪にした決定的理由が分からないまま過ごしていた私。それが本当に小さな1つの悩みだった。他の悩みに隠れていたこの小さな悩みと向き合う必要はさほどなかったのかもしれない。それほど自分を苦しめてはいなかったから。

でも「髪型変えたワケ」というテーマと出会い、小さな悩みこそ深く考えることで完璧な答えに辿り着くことはできなくとも、自分の正直な気持ちに気づけたような気がした。
そして女だから、男だからと決めつけられたイメージを壊したいと思う私が、もしかしたら固定概念に囚われているのかもしれないとも思った。