恋に飛び込んだ。君の彼女になれたのは決死の覚悟と勇気のおかげ

君と初めて出会ったのはサークルの教室新歓のとき。大学のサークル達が精を出す新歓の季節。偶然友達と立ち寄った新歓。今思えばあの時から運命の歯車は回り始めていたのかもしれない。君を一目見た時、シンプルに、あ、イケメンがいると思った。これは一目惚れしやすい体質の私にとってよくあること。
しかしこの時私にはもう一つふと思ったことがあった。こんなひとの彼女になれるのはどんな人なのだろうって。私にとってイケメン先輩の彼女枠はドラマで見る現実味のないものだった。
迷いに迷いまくった挙句、私は君のいるサークルに入ることにした。少し独特な雰囲気のサークル長のラインのプロフが君のものであると知ったのは再会を果たした活動の時だった。君の明るくて面白くてみんなに気配りができるところが素敵だと心動かされた。直感で君に近づきたい衝動に駆られた。もっと話してこの人がどんな人なのか知りたい。
でも君はサークル長で私は一年生。越えられない壁がそこにある気がした。君が同級生や他の先輩と楽しそうに話をしているたびに私とは違う世界に住んでいるんだなと胸が切ない。
君と2人きりで話してみたい。サークルのイベント準備のあと、他のメンバーは先に帰り私と君が残る。でも君は先にお疲れ様と言ってどこかへ行ってしまう。あぁ切ない。君は私と帰りたくないのか、2人きりになるのが嫌なのだろうか。そりゃそうだ。もしも既に彼女がいるのなら他の女と一緒に帰らないようにしてるか。
でもついに成り行きで君と2人で帰れる日が来た。話は盛り上がった。2人で図書館で勉強なんてシチュエーションを妄想して勉強教えて欲しいなアピールをさりげなくすると、君は笑顔で承諾してくれる。
でもそうじゃない。それは社交辞令の承諾。先輩としてじゃなくて私が君を恋愛対象として見ていることは伝わってるのだろうか。あえて交わされているのならば上級者だ。名残惜しさがバレないよう笑顔でわかれた後の私の心の中ではガッツポーズ。君と初めて2人で帰れて距離が縮まったように感じた。
しかし待ちに待ったイベント当日。君は雲の上の存在に見えた。全体に指揮を出しまとめ上げる君。私になんか目もくれていないだろう。君が私を特別に見ていることなどあり得ず淡い期待をいだいていた自分がバカらしくなった。私は1人で勝手に舞い上がるのが得意だ。調子に乗りすぎた。
次に君と2人で話す機会が巡ってきたのは1週間ほどあとの活動の日だった。私はとりあえずおすすめのお店を聞き出すことにした。おすすめのラーメン屋を聞き出せたことに安堵しながら今度ここへ行きませんかと誘おうと作戦を練った。
3度目に大チャンスが巡ってきたのはインカレのお祭りのお手伝い活動。君は後輩がインカレ活動に参加するならついてきてくれる優しい人だった。様々な幸運が重なり、君と2人で参加することができた。一緒に行きたいと思い電車の時間を勇気を出して聞く。どこの車両に乗っているか教えてくれやしないかと期待を寄せたがこれも見事に撃沈し降車駅で合流する。君との活動は心の底から楽しかった。休憩時間に2人で屋台の焼きそば路上に座って並んで食べたのも良い思い出だ。
いろんな話が聞けた。君のことをたくさん知れて良い人だと確信した。どこか思考も似ているのところがある気がした。迷子の子を宥めていた君を見て最高のお父さんになるやないか、とも確信した。地下鉄に揺られながら帰る。直接君をご飯に誘う勇気なんて君を目の前にするとやはりでてこなかった。
その後は特に進展も無く夏休みを迎えようとしていた。夏休みに入れば活動で次君に会えるのはいつだろうかと考えると気が遠くなった。せっかく君をよく知れたと思ったのにこのまま何事もなかったかのように先輩と後輩として生きるのはもったいない。もっと近づきたい。私のことも知って欲しい。今でもなぜあんなに勇気が出たのかわからない。
君をLINEでラーメンに誘ってしまったと気づいた時スマホをぶん投げた。息が、心臓の鼓動が頭に響きわたる。その日は無理だという返信が来た時、終わりを察した。私の恋はここまでかと。理由をつけてやんわり断る君。そういえば君に彼女がいるかどうかも聞けていない。お祭りで聞こうとしたがあまりにも場違いすぎる話だった。彼女がいるかどうか聞くのは自ら好きバレするようなものだ。
次の週なら行けるかもとかえってきた時、じわっと心が温かくなるのを感じた。死ぬほど嬉しかった。代替案を提示してくれるなんて。少なくとも私のことは嫌いではないんだなと分かり本当に嬉しかった。彼氏なんてできたことの無かった私が異性の先輩とご飯に行く、今まで何度妄想を膨らませただろうシチュエーションが現実になるなんて。
この時の私の決死の覚悟と勇気が無ければ、君の彼女になることは一生無かっただろう。
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