小1のバレンタイン。茶髪のクラスメイトに渡したチョコレート

初めてバレンタインデーにチョコレートを渡したのは小学生1年生の時。
今思い返せば、きっとこれが人生初の一目惚れだった。
よく、一目惚れや結婚を決めたきっかけのエピソードを話す時に「雷に打たれたような衝撃」という表現を使うことがあるが、私は人生で一度も本物の雷に打たれたことも(雷が当たることもそうそう無いので当たり前と言えば当たり前ではあるが)、雷に打たれたような衝撃を受けたことも無い(むしろこちらから急速に相手を好きになるタイプではなく、相手に好かれてからこちらの好意もだんだんと上がっていくタイプだということに後から気付いた)。
だが、そこまでの衝撃を受けたわけではなくとも、初めて異性を好きになった時のことは非常にはっきりと覚えている。
その子を好きだと気が付いたきっかけについても、はっきり覚えている。母親から「今年のバレンタインデー、チョコ作るの?」と聞かれて、そういえば小学校の同じクラスのあの子にチョコレートあげたいな〜と思って作ったのだった。
齢7歳にして、バレンタインに意中の男子を射止めようとしている娘を前に母も張り切る。
次の週末には最寄り駅の駅ビルに入るファンシーショップに一緒に訪れ、可愛いハート型のギフトボックスを買い、併せて無印良品の製菓キットを買って帰った。
なぜその子のことが好きになったのか。出席番号も遠く、自宅が近いわけではない彼は、幼なじみというわけでもない上に、入学してから休み時間に一緒に遊んだこともなかった。それでも彼に好意を寄せたのは、小学一年生にして茶髪に染めていた彼をかっこいいと感じたからだった。
特に、今はダメージケアのカラー剤なども普及しているので髪を染める小学生も少なくないが、20年近く前の私が小学生だった当時、クラスで髪を染めているのはただ1人彼のみで、良くも悪くも目立っていた。
こうして私が彼にバレンタインデーのチョコレートを渡すことになったのは、文字通りの一目惚れだった。しかし、当時それを周りに話すのが恥ずかしく、「どこが好きなの?」と聞かれても「なんとなく(笑)」と返していたこともはっきりと覚えている。
そしてその後、バレンタインデーのお返しを彼のお母さんが準備して私の自宅まで届けて下さったところから、私たちは家族ぐるみで仲良くなり、中学年・高学年と学年を重ねる中で私たちは特に恋愛感情を抱くことは無いまま、ただ両親共に馴染みのある仲のいいただの同級生になった。
ただ、私たちの交流が続いたのはその頃までで、お互い別の中学校に進むことになり、この一目惚れが本当の恋愛に発展することは無く終わった。
次に彼と顔を合わせたのは約8年後の成人式の時だったが、遠くからやっほーと手を振った程度で、特にそれ以上は何もなかった。
私の最初の一目惚れが髪を茶色に染めたちょっとイケてるクラスメイトだったということは、その後誰にも話していない。ここが初出しだ。
ちなみに、私の現在の夫は人生で一度も髪の色を染めたことがない、純粋無垢なタイプである。このエッセイを書きながら、人生って結構振り幅があるもんだな、と改めて感じた。
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