最後に着たい服を当たり前に着れたのは、いつのことだっただろう。そう遠くない過去のはずだが、もうずっと着たい服を着れていないような気がする。
以前は着たい服を好きなように着ていた。私は好きな服装の系統があまり定まっていない。だからいろんな系統の服を着ていた。カジュアルな格好も、可愛らしい格好もしていた。

下半身に比べて上半身が華奢なタイプなので、肩出しの服もよく着ていた。祖母に「はしたない」と止められても、これが好きだからと言って構わず着ていた。

ここ数年で、急激に太った。それはもう、尋常ではないほど太った。20kg増えた。

普通は体重を見たら事の重大さに気づくだろうが、私が気づいたのは体重を見たときではなかった。

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今まで着ていた服は、意外と着れていた。綺麗な形ではなくても、なんとか着れていた。

服は少しずつ伸びるらしい。半袖から露わになる腕がどれだけ太くなろうとも、ショートパンツから覗く太ももがどれだけ太くなろうとも、服が入る以上、私は痩せていたときの服を着続けた。

元々着ていたMサイズの服が入っていたので、私は通販で当たり前のようにMサイズの服を買った。家に届いてすぐに、喜んでその服を着た。
入らなかった。
それでも狭い首元に無理やり首を入れて、狭い袖に無理やり腕を通した。しかしそれはとても「着れた」と言える状態ではなかった。子供服を無理に着ている大人みたいだった。

妹はその姿を見て大爆笑していた。私も妹と一緒に笑いながらも、やはり傷ついていた。

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「その体重でMサイズは無理でしょ」

母は当然のように言った。たしかに私の当時の体重は、お世辞にも標準体重とは言えず、Mは無理だろうなと思う体重だった。

でも私はそのときも、痩せているときに買った服を着続けていたから、自分は体重が重いだけで、体のサイズに問題はないと思っていた。

「でもいつも着てるのはMだよ」

私は反論した。あくまで私が買った通販サイトの服がたまたま小さかっただけだと思いたかった。

「いつも着てるのは前から着てる服でしょ。前から着てるのは伸びてるから着れるよ」

衝撃だった。私はMサイズを着れる女ではなくなっていた。

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それからというものの、服の災難は続いた。
タンクトップが脱げなくなって、脇の縫い目が裂けた。
満腹で友達と歩いていたら、穿いていたデニムのボタンが取れた。
もはやそれまで着ていた服も入らなくなり、捨てたり妹に譲ったりすることが増えた。代わりにサイズが大きい服を買おうにも、サイズが大きくなればなるほど、好みのデザインの服は減っていき、着たい服は試着しても入らないことが多くなった。

ここ1年は、もはや服を買っていない。試着して絶望するのも、着ていた服が壊れていくのも、もう疲れた。

着たい服を好きなように着れるというのは、当たり前のことではないと気づいた。少なくとも私は、努力をして痩せて、自分の納得のいく体型にならないと、着たい服を着れないことがわかった。
着たい服は沢山ある。買い物に行っても、自分のクローゼットを見ても、着れない服ばかりで嫌になる。そんな日々はもう懲り懲りだ。だから私は、ダイエットに励んでいる。
私が着たい服を着れる日は、いつになるのだろうか。いつかはまだわからないが、必ず来ると信じている。