夢の一人暮らしで崩れた「生活」という概念。手に入れた自由と責任

一人暮らしの快適さと言ったら、とどまることを知らない。
私は、どうしてもどうしても一人暮らしをしたくて、両親をどうにか説得して、はるばる一人暮らしの権利を手に入れた身だ。奨学金を借り、必要最低限の仕送りだけで生活すること、また学費のかからない大学に行くことなど、両親が出した様々な条件を見事クリアし、私は夢の一人生活を手に入れた。
一人暮らし一年目。周りがこぞってホームシックを発症しているころも、私は全然平気だった。多くの友達は、長期休みにはいそいそと実家に帰り、長々と滞在しているようだったが、私はバイト三昧で、来る日も来る日も働いていた。電話したりラインしたりすることはあっても、あまり帰ることはなかった。
一人暮らしをすると、生活の概念が崩れていくのが面白かった。「こうあるべき」という生活は、実は家族によって成り立っていたことに気が付いた。地面で食べてもいいし、ベッドで食べてもいい。好きな時間にコンビニに行けるし、何時に帰ってきてもいい。あまりにも自由で、自分の好きなように生きていけることを実感でき楽しかった。
一方、その自由と引き換えに、責任が生じた。何をするにも自由。だからこそ、自分を律する力が必要になる。お金の管理や、食生活。どんどん堕落していくこともできるし、逆に誰の邪魔も入らないので、自分の理想とする完璧な生活を送ることもできる。
自分がどこまで落ちてもだれも止めてくれないので、そこは一人暮らしの大変なポイントだと思う。ちなみに、私が一番最初にぶち当たった壁は、お金の管理だ。自分がバイトで頑張った分だけお金が手に入り、そのお金で自由に生活できることが楽しかった。しかし、何に使っているのかよく分かっておらず、稼いでも稼いでもなぜか常に金欠だった。
さすがに心配になり、どうしようかと思っていると、友達から家計簿をつけるようにアドバイスをもらった。最初は面倒くさかったが、続けているうちにどんどん楽しくなった。自分が何にどのくらい使っているのか記録がたまっていき、お金の使い方が見える化するのは、案外気持ちがいいものだ。正直、家計簿をつけることで節約できるようになったわけではないが、少なくとも収入以上の出費をしてしまうことはなくなった。今では家計簿に記録しないと落ち着かないくらいになり、アドバイスをしてくれた友達には感謝している。
次にぶち当たった壁は、自炊だ。最初はやる気があり、色々な料理道具や調味料をそろえて料理を作っていたが、半年もたつとフライパンを握らなくなった。しまいには、フライパンやまな板はいらないと思い、家にあったありとあらゆる料理道具を家族に譲ってしまった。それを言うと毎回驚かれるのだが、このことに関しては特に後悔していない。実際食材を使いきれず腐らせてしまったり、作り置きしても外食が続くことで食べれなかったりと、フードロスが多かったからだ。また今は、電子レンジや炊飯器という素晴らしい電化製品があるので、それらを駆使すれば、野菜や肉なども調理することができ、手間暇かからず健康的な食事が完成する。また、納豆や豆腐、卵も一人暮らしの見方だ。火を使わず、生ですぐに食べられ、しかも栄養価も高いときた。そのおかげで一日一食は、必ず卵かけ納豆ご飯である。
このように、私は一人暮らしをしていく中で、自分に合った生活を確立することができた。すべてが自己責任だからこそ、自分を律する力や生活における譲れない部分、自分の大事にしたい価値観などが見えてきた。その発見が、私が一人暮らしをしてよかったと思えていることだ。
一人暮らしは大好きだが、家を出たことで家族の温かさや実家のありがたみにも気が付いた。久々に実家に帰ると、賑やかな喧騒が出迎えてくれて、懐かしい気持ちになる。あの頃は、出たい、出たい、とばかり思っていたけど、一人暮らしをして初めて、あの賑やかな喧騒が暖かいものだったと知ることができた。
一人暮らしは、私の人生に様々な発見と、経験を与えてくれた。いつか家族を持ち、自分の子供や旦那さんと一緒に暮らす未来が来るまで、一人暮らしを満喫したい。
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