10代20代の夏。あのギラギラと照りつける太陽のエネルギーに、ミンミンと鳴く蝉の声。その真夏の勢いに後押しされ、搔き立てられるような想いで“気になるならやってしまえ”と、行動が起こせたのはなぜだろう。

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私の学生時代はいたって真面目で、決められたルールの中からはみ出ることも、はみ出すこともなく過ごしてきた。その方が悪目立ちせずに楽だと思っていたからだ。

そんな私でさえ高校時代の夏休みには、校則に反した行動をした。髪の毛を明るく染め、推しのライブに行くためにバイトをした。お金に関しては、使う理由をちゃんと話せば親が用意してくれる家庭だったけど、この時は自分でお金を稼ぐことに興味が湧いた。

親からは「校則違反でしょ。見つかったら大変よ!」と忠告を受けたが、「絶対にばれないようにするから」と何度も説得して押し切った。

ずっと真面目に生きてきた。ずっといい子で過ごしてきた。だから学校から少し離れられる夏休みの間だけは、ルールを少し破りたくなった。夏の暑さがスパイスとなって好奇心を強くさせた。

夏祭りデートにも憧れた。タイミングよく告白され、そこまで好きではなかったけどなんとなく付き合い、 “夏の恋”にドキドキした。

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大学生にもなると、夏休みは長い。1人暮らしの友達の家へ遊びに行って、夜通し恋バナで盛り上がった。いつしかカーテンの隙間から朝日がさしてきて、「えっ?もう朝!」と大笑いしたこともあった。

女1人旅にも憧れ、自分1人で日帰り京都旅行を実行した。今のように便利なスマホがあるわけではないから、旅行本片手にあれこれ調べ、恋が叶う神社や夢が実現する神社へあくせく祈願した。

今となれば、なぜあんな行動を起こせたのだろう?と不思議に思う。若いが故のパワー、無知だからこそ出来る行動力。そして日本特有のムンムンとした夏の暑さが、好奇心や興味心をかき立て、真面目な私の殻を壊していった。しかもあのギラギラと照りつける太陽が、「やってしまえー!」と後押しし、ミーンミンミンの蝉の声が「レッツゴー、レッツゴー!」と応援歌のようにも聴こえたのだ。
若いから日焼けだって大丈夫と燦々と太陽を浴び、海へと水着姿で挑めたのも今となっては懐かしい。人混みの中、暑くてもみくちゃになっても、お洒落重視で浴衣で夏祭りに臨めたのも初々しく思える。正直今は、面倒くさい気持ちが先立ってしまうから。

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そんな私も高校生と中学生の子を持つ母となった。日本の暑い夏が、若者の好奇心を掻き立てる。ちょっぴり背伸びして大人な行動に興味がわく時だ。そんな時期に到達した子供達を、ある程度は広い心で見守りたいと思う。

実際に高校生の息子は、日帰り1人旅をあれこれせっせと計画中。中学の娘も、推しのライブに熱を上げている。2人とも夏休みをいいことに好きなことに夢中で、“やってみたい”とガッツリ向き合っている。

体が溶けてしまうほど暑い夏なのに、はつらつと楽しそうに行動できるのは、やっぱり若いが故、無知だからこそなのだろう。親としては人に迷惑をかけなければ、色々なことに挑戦し経験してほしいと願っている。

だって、若い頃の夏はやっぱり特別だから、今しかできない“やってみたい!”を大切にしてほしい。そして後々、今の私のように“なんであんなことができたのだろう”と、若い頃の自分を懐かしんでほしいと思う。

若い頃の夏のパワーは、いつまでも継続しない。案外人生において一瞬かもしれない。例えそれが失敗だったとしても、きっと人生の糧になってくれると思う。