「いつまで実家で暮らすつもり?両親に甘えてばかりじゃダメだよ」。

仲の良い友人からそう言われた。実家で暮らす私は、よそから見れば甘えて見えるのかもしれない。だが、私には実家暮らしにこだわる理由がある。それは、発達障がいがあるから。

◎          ◎

収入は、障がい者年金と作業所のお給料のみ。合わせて月10万だ。これでは、ひとり暮らしはできても、将来のためにお金を貯めることはできない。老後には2000万円必要だと言われている。一人暮らししてお金を使うより、将来のために貯蓄しておきたい。そんな気持ちが私の中にある。
実家暮らししているからと言って、何もかもを両親に頼っているわけではない。
洗濯や掃除などの家事は手伝っているし、買い物にも出かけている。
生活費だって、月に3万円は母に渡している。
「実家暮らし=甘えている」という偏見は、なくなってほしい。

実家暮らしにこだわる理由は、もう一つある。それは、家族と過ごす時間を大事にしたいから。「お母さんが作ったカレー、おいしいね」「あら、そう?嬉しい」「明日はお父さんが料理作るからな」何気ない会話は、私にとってかけがえのない時間だ。怒ったり、泣いたり、笑ったり…家族の色んな表情を見ることができるのが楽しい。明日はどんな表情が見れるかな?と想像しながら、毎晩眠りにつく。それが、私の幸せだ。命には限りがある。その限りある時を、家族と一緒に過ごしたい。そんなふうに考えている。

◎          ◎

実家暮らしで困ることもある。それは、共同生活なので我慢しなければならないということだ。
綺麗好きの母は、毎日せっせと部屋の掃除をしている。少し汚い方が落ち着く私にとっては、それが大きなストレスだ。それと、父のテレビの音がうるさい。感覚過敏の症状がある私にとっては、大音量のテレビの音が苦痛だ。もう一つは、プライベートな空間を確保できないということだ。好きな人や友達への電話は、すべて筒抜け。両親から「いま、あの人と話をしていたでしょ」なんて言われる。ひとりになりたい時も、常に誰かと一緒にいなければならない。ひとり暮らしだったらこんなことはないのに、と思う。

◎          ◎

母は、私にひとり暮らしをしてほしいようだ。
「私がいなくても大丈夫ってところを見せてちょうだい」と、口酸っぱく何度も言われた。
そう言われると、言葉に詰まる。母が、本気で私のことを心配しているのが分かるから。
母の気持ちを思うと、実家暮らしをしていることに罪悪感が湧く。
家を出るとなれば、グループホームに入ることになる。発達障がいのある私が、集団生活についていけるか不安だ。もしくは、賃貸マンションを借りて一人暮らしをするか。どちらにせよ、お金がかかる。一人で暮らすとなれば、心細い気持ちにもなるだろう。女性なので、防犯面も気になる。

先日「お父さんが定年になったら、引っ越しをするから。タイムリミットは、あと3年」と母から告げられた。このまま実家暮らしを続けるか、思い切って一人暮らしをするかーー3年後までには、決断しないといけない。メリット・デメリットを考えたうえで、最善の選択をしたい。私はどちらを選ぶのだろう?どちらを選んだとしても、笑って毎日を過ごしたい。