夏の匂いを感じてからというもの、急に外が暑くなって1年ぶりに夏が来たことを知りました。

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暑くなると私はノースリーブを着ます。着ることが出来ます。
かき氷だって食べれるし、海にだって行ける、朝のあの暖かくて眩しい光を感じることもできる、夜になるととても暗い、けれど虫の鳴き声のおかげで気持ちが沈まない夜も過ごせる、ひとりにならない夏だけが持ち合わせている夜にも出会える、冬もとても綺麗で美しいけれどここまで私にとって愛おしい、自由な季節は夏だけなのかもしれません。

夏は私に色々なことを可能にさせてくれる……。全てを与えてくれる、そう思っています。
去年の夏、好きな人が居ました。暑すぎる、その原因の太陽にやられて、頭が何も働かなくて、誰を見ても同じに見える……。まさにコンタクトを忘れてしまったかのような日々でした。でも、ただ1人だけくっきりと輝いて見える人がいました。突然彼と出会い、初めから輝いていたかのように言ってしまいましたが、彼がこんなに輝いて見えたのは初めての出会いからではありません……。

暑い夏の下、私は友達数人と出掛けていました。そのときに初めて彼と出会いました。そのときは全然輝いていなかったのです。ですがその輪の中に馴染めない私と彼の中にはなにかしら共通するものがあったのでしょうか、何故か自然と私たちはお互いにコミュニケーション少しづつ少しづつを取っていき、それを通して知れる彼の仕草であったり、優しさであったり……。を見て、その仕草や優しさの奥にあるものを知っていくうちにだんだんと私は彼に惹かれていきました。

そして気づいたときには彼だけがこの世界の中で輝いていて、どんな人混みの中でもすぐに見つけ出せるくらいの光を放っていたのです。暑さがあるから……。2人でかき氷を食べたに出掛けた日もあります。何故か2人とも緊張して話が続かなかったけれどふたりで沢山笑った日々……。海にいこう、そしてBBQをしようと夏の夜を思い描いた日々……。いつどの思い出を取って思い返しても全てがとてもとても大切な思い出だったのです。

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彼は夏にノースリーブを着るのがとても好きでした。夏にしか着れないから好きなのだそう……。でもわたしはあまり好きではありませんでした。どうしてって、腕を出すのは何故か恥ずかしいから、だけど彼は腕を出している私をも肯定してくれました。

可愛いと言ってくれた、とても嬉しかった幸せだった。だからこそもう忘れたい、、そんな彼でしたが、結局はわたしと付き合うことも無く、夏が与えてくれる自由に誘惑されて、彼はどこか遠くへ行ってしまいました。

わたしはその日から彼が与えた幸福の分だけ、とても悲しい日々を強いられました。そしていつしかその思い出もなにか思い出しては行けない黒いものに思えてきて、それを引き出してくる彼に関連するものを沢山持っている夏には本当に来て欲しくなかった、帰って欲しかった、だけどわたしは夏が近づき、ひとりにならない夜になってくるにつれて気づいてしまったのです。というよりかは虫の明るい声がまるで私を元気付けるように教えてくれたのです。

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この思い出は悲しい思い出などとかではなかったこと、彼が与えてくれた幸せの思い出だけは決して失われていないこと、まるでずっと続く宝石のようなものだと……。

今年の夏、私はまた新しい経験をするかもしれません。そしてその経験は、私に幸せだけじゃなくて、悲しみも沢山与えてくるかもしれない……。だけど私は夏が救ってくれるから、大胆に行動しようと思います。そして今回もまた沢山の経験と思い出を得ることが出来そうです。ありがとう、夏。