自分のためのランジェリーは、何気ない道もランウェイに変えてくれる

もう4年になるだろうか。
7月、毎年この時期になるとそわそわするイベントが私を待っている。
総ランジェリー入れ替えイベントである。
ある意味少し恐怖な、しかし自分を大切にできるそのイベントが私は好きだ。
昔からそれなりにいい下着を身につけてきた。
そうしたかったわけではなく、そうせざるを得なかった。
G7改めG70という一般的ではない私のバスト。
そんな私を包んでくれる下着があるところ、それだけでちゃんとした作りの、高めな有名下着メーカーが御用達だった。
サイズがあるだけありがたい、デザインにこだわるなんてことは到底なかった。
特に大きな変化があったわけではなく、ただ、痛んできた下着の代替えを買おうと、いつも購入していた有名下着メーカーへと足を運んだ頭巾感じた違和感。
「あれ、可愛くない。買いたくないかも」
自分のサイズに合った下着なら何でもいいやと思っていた私が、その時なぜかデザインに対する違和感が気になって仕方がなかった。
フィッティングどころか、店の外から眺めるだけで足を踏み入れることもなかった。
自身の心情変化に戸惑う間も無く、新たな店を探すことになった。
「あの店、入ってみるかな」
数軒回って疲れた私がようやく辿り着いたお店こそこの数年通っているお店だ。
我ながら自分の雰囲気とは真逆のかわいい、ふわふわとして店内。
妙にそわそわして落ち着かないし、冷や汗すらかいていた。
「サイズお測りすることもできるのでいつでもおっしゃってくださいね」
そういって声をかけてくださったお姉さんに縋るように私はサイズ確認とフィッティングをお願いした。
「これはいかがですか?まだデザインたくさんあるのでおっしゃってくださいね!」
水色系でとだけ伝えた私の手に渡されたそれは水色を基調として貝殻をモチーフとした柄が刺繍であしらわれている人魚をイメージものだった。
「かわいい、かも」
なんて言いながら鏡に映る私の顔はどうしようもなくほころんでいた。
一番体に近い存在にも関わらず、最低限の機能だけを求めていた私。
女としての自尊心が一瞬にして満たされていく。それは誰かのためではなく、紛れもない自分の中の女が満たされた瞬間だった。
生まれて初めて下着ではなくランジェリーを身に纏った。
私の購入するランジェリーは1セット約1万と、私にとっては安くない買い物だ。
「下着にそんなお金払ってもったいないくない?」
この話をするとたまにこういった言葉を言われることがある。
そういう価値観もある意味間違ってないと思う。
しかし私は下着という物理的なものにお金を払っているのではないのだ。
ランジェリーを見に纏うと自然と背筋が伸びる。
シンデレラフィットしたランジェリーは、私をヴィクトリアズ・シークレットのエンジェルへと変え、何気ない道をランウェイに変える。
私自身の女性という側面に対する自尊心にお金を払っているのだ。
今日も先日購入したフラワーの形をしたたくさんのレースがあしらわれたライトグレーのランジェリーを身に纏い私は街へと出る。
時々思い出しては思わずムフフと笑うのはご愛嬌。
誰に知られることもない、私だけの、私の満足のための最高にキュートな1着だ。
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