「不安=やめた方がいいサイン」だと思っていた私を救ったあの言葉

20代前半の頃、私は「カウンセラーとして生きていきたい」という夢を胸に、人生の大きな決断を下した。それは、ある起業塾に申し込むことだった。
でも、決断したからといって、心が晴れたわけじゃない。現実はもっと重たくて、申し込みボタンを押す指が、何度も震えた。「こんな高額、払って大丈夫かな?」「本当に自分にできるの?」「親には何て言おう…」そんな不安が、毎日私をぐるぐると囲んでいた。
大学では心理学を専攻していて、人の心の動きや、変化のきっかけにずっと興味があった。でも、就職活動を進めるにつれて、自分のやりたいこととのズレがどんどん広がっていくのを感じていた。そんな時、あるカウンセラーの先生との出会いが、私の人生を大きく変えた。
「この人みたいに、誰かの心に寄り添える人になりたい」
そう思った瞬間のことは、今でも鮮明に覚えている。
私もそういうことがしたい。
やりたいことができたことなんて、これまでの人生であっただろうか?
いや、初めてだった。
だけど、夢に向かって一歩踏み出すのは簡単じゃなかった。私の家庭では、堅実さが何より大事とされていた。両親は「夢を見る前に、安定した職に就きなさい」が口癖だったし、自分でも「どうせ無理だよな」とブレーキをかけていた。
起業塾に申し込もうか悩んでいた時、私はある人に言われた。
「不安って、未知に対する自然な反応なんだよ。不安があるってことは、それだけ本気ってこと」
その言葉に救われた。私は、「不安=やめた方がいいサイン」だと思っていたけど、実は「不安=挑戦している証拠」だったのだ。
そこから私は、自分の不安と正面から向き合ってみることにした。
「何が怖いのか?」
「本当に失敗したらどうなるのか?」
「その時、自分はどうするのか?」
ノートに書き出してみると、少しずつ霧が晴れていく感覚があった。最大の不安は、「お金を払っても、それに見合う結果が得られなかったらどうしよう」というものだった。でも、よく考えたら、それは未来の自分の努力次第で変えられることだった。
「仮に仕事にできなかったとしても、自分の人生にとって無駄になる学びなんてない。死ぬわけじゃないし、またバイトでもすればいい」
そう思ったら、少し肩の力が抜けた。
親に話すのは、正直一番怖かった。
説得しても分かってもらえないんじゃないか、怒られるんじゃないか、そんな思いがあった。でも、覚悟を決めて正直に気持ちを伝えた。最初は反対されたけれど、「自分の人生、自分で責任を持ちたい」と泣きながら話す私を見て、最後には「分かった。やってみなさい」と言ってくれた。
あの日から1年。まだまだ道半ばだけど、私は今、自分でホームページを作りあげて、カウンセリングの練習を重ね、小さな一歩一歩を積み上げている。最初の一歩を踏み出した自分を、心から誇りに思う。
夢を叶えるためには、情熱や努力だけじゃ足りない。「不安」とどう向き合うかが、ものすごく大事だと気づいた。そしてその不安をひとつずつ言葉にして、少しずつでも進んでいけば、道は開ける。
21歳の私が乗り越えたのは、お金でも親の期待でもなく、「自分自身の中の迷い」だった。あのとき、不安と一緒に歩む勇気を持てたこと。それが、私の人生を変えた一番のきっかけだった。
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