私には、12歳上の従兄妹がいる。
小学生の頃は近所の原っぱで一緒に虫取りをしたり、伯母の家に行った時はボードゲームやおもちゃで遊んでもらっていた。
兄ちゃんと私は同じくらいお喋りで、会った時にはお互いマシンガントークで周りの親戚を圧倒していた。
一人っ子の私にとって、従兄妹の兄ちゃんは本当の兄と同じ感覚だった。

そんな従兄妹がカナダに留学すると聞いたときはびっくりした。
でも、伯父は英語教師だし、大学でも英語を勉強していた従兄妹にとっては"すべきこと"だったのだと思う。
しばらく会えないことに寂しさを感じつつ、帰ってくる日を楽しみにしていた。

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1・2年ほど経って帰国した従兄妹と久々に会うと、色んな話を聞かせてくれた。
カナダで舞台を観たこと、新たな友人との話、海外の大学で感じたこと。
聞けば聞くほど面白い話ばかりで、今思えば「この世界は広くて楽しい」ということは従兄妹から教わった気がする。

そんな従兄妹を見て育った私が留学をしたかというと、27歳の現在でもしていない。
これが創作であれば大学時代にでもしているのだろうが、現実はこんなものだ。

留学を全くしたくないわけではないが、どうしても海外にいる自分が想像できない。
あと、単純に胃腸が弱いので、海外の食事も含めて色々不安なことが多い。
不安要素だけを考えてしまうので、きっと私は留学に向いていないのだろう。

私の周りでは、2回目の留学に向かった大学時代の友人もいる。
彼は英語を学ぶことで仕事に活かすという目標があるし、元々海外に一人旅していたタイプなので向いてるんだなぁと思う。

彼の話を聞いていると、幼き頃に従兄妹から聞いていた話を思い出す。
私は、色んな人の経験したことを聞くのが好きなのかもしれない。
いろんな人が経験した人生を垣間見ることで、世界が広いということを知りたくなるのだ。

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数日前、従兄妹の兄ちゃんと久々に電話をしたとき、変わらず30分ほど話し込んでしまった。

40歳なった兄ちゃんに「私、今年で28歳だよ」と言うと「本当に!?」とびっくりしていた。
同時に「年齢はね、ただの数字だから」と言われた。
なんだかその言葉にハッとした自分がいた。

「30歳までに何かをしなければ」と、変に自分の中で区切りを設けようとしていたが、そうじゃなくても良いのかもしれないと思った。

兄ちゃんは、学んできた英語のスキルを活かして、今はオンラインの英会話教師をしている。生徒もたくさんいるというので、人気の先生なのだろう。
兄ちゃんの生き方を見ていると、きっと今やりたいことをやっていいのだと思える。
やりたいことをやって、その先に何かがあるのだと信じられる。

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今の私は「留学はしなくてもいいや」と思っている。
どちらかといえば、日本にあるものをもっと学んで、日本語の使い方を突き詰めていきたい。

ただ、もしかしたら急に留学をしたくなるかもしれない。
そうなっても、それが自分のやりたいことであれば問題ない。
だって、やりたくなったときがやるべきタイミングなのだから。