初めてスマホを手にしたのが高校生になるときなので、スマホとの付き合いはそろそろ10年くらいになる。ちなみに来月買い替え予定で、3台目だ。
自分専用のスマホを手にして以降、24時間もスマホから離れたことがない。友だちと遊んでいるときでさえ我慢できずに話のネタを探ろうとスマホを触ってしまうのに、24時間なんて、そんな、ねぇ??(汗)

というわけで、覚えている限り、24時間スマホを触らなかった最後の経験は、中学3年生までだ。中でも中学2年のときの修学旅行は、今では考えられないくらい怖いもの知らずだったなと思う。

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宮崎県の中学生だった私たちの修学旅行先は関西だった。奈良の鹿と建造物巡り、京都の班別自主研修、フィナーレに大阪のユニバ。今どれを行くにしても、絶対スマホが欲しい。

奈良で鹿に餌をやった。今なら餌をやる前に「鹿 餌 注意点」とかで調べる。だって突進されたら嫌だし。実際、そのとき軽く飛びつかれた私は、手に持っていた煎餅を粉々にしてばら撒いた。地面に落ちたものを食む鹿にもう近づこうとは思わなかった。

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京都の班別自主研修は、言うなれば自由行動のことで、スタート地点とゴール地点だけが決まっている。その間はどこで何しようが私たちの勝手で、見たいものを見て、食いたいものを食いなさい、とのお達しがあった。

スマホを持っていなかった私たちがどうやって見たいものを見て、食いたいものを食うかというと、修学旅行に行く前に授業の中で計画を立てる時間が設けられていた。その授業の中で、まず見たいもの(食べたいもの)を決め、それがどこにあるのかを地図に描き起こしておく。何時にどこどこのバス停でどこ行きに乗ってここに行く、というのもぜんぶ。当日はそれを頼りに京都を周遊する。

今なら絶対ありえない。そもそも旅の目的だってインスタやTikTokがきっかけなのに、ましてやGoogleマップもなしにどうやって動けというのだろう。それでも当時の私たちはそれをやってのけたのだから本当にすごい。ゴール地点には約束の時間に間に合わなかったけど。

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ユニバだって同じことだ。どのアトラクションがどこにあって、今何分待ちか、という情報を一切得られない中で、よくもまぁあんなに楽しめたもんだ。結果的にスパイダーマンに2回とジョーズに1回乗れているから及第点だ。ホットチョコレートも2杯飲んだし、スモークターキーも食べた。

中でも今思い出して感動するのは、ユニバ内で、グループの中の一人が当時付き合っていた彼氏と待ち合わせして別行動をしたことだ。スマホがないということは、連絡手段がない。全員が初ユニバだったのに、それでも待ち合わせをして、2人は無事にユニバデートをした。なんてロマンチックなんだ。

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そう、スマホがないというのはロマンの塊なのだ。あのとき鹿にどつかれたこと。清水寺までの行き方がわからなくて、バスを乗り過ごしそうになったこと。ホットチョコレートがもう一杯飲みたくて、必死こいてさっき買った売店を探し回ったこと。友だちカップル2人が出会えた瞬間の喜び。

ロマンチックだったなぁ、と回顧しながら、このエッセイを私はスマホで書いている。できればペンとノートで、いや、鉛筆とノートで書くのが最高にエモいんだろうけど、生憎私はもう鉛筆を持っていない。持ってすらいないのだ。