家族からの連絡の確認や支払い、写真撮影、SNSでの投稿……。 
つけば、無意識にスマホを触っている。  実はこのエッセイも、スマホで書い

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スマホを初めて手に入れてから10年経つが、スマホは無くてはならない存在となった。
大学生の頃はお財布と本、携帯電話にデジタルカメラと荷物が多かった。今ではスマホと家の鍵だけで外出できるようになった。

スマホに依存している、と言っても過言ではない。

しかしそんな私も、一度スマホが嫌になったことがある。
去年の夏の話だ。

きっかけは、仲良かった友達グループのLINE。ほんの些細なことで意見が分裂した。
そのグループは私を入れて6人だったが、私対5人と孤立無援となってしまった。

私が考えを改めればこの話はすぐに終わったはずだった。
しかし私は頑固者だ。一度決めたら中々折れない。皆を改心させたかったために、毎日ごり押しで連絡をしてしまった。

それさらにグループの仲を悪くさせた。

ついにはグループLINEが硬直した。誰も言葉を発さなくなった。
こうなると、時間しか解決してくれなさそうだ。

「もう嫌だ!」

私はスマホをベッドに投げた。
自分がいけないはずなのに、すべて投げ出したくなってしまった。

どんどん嫌悪感が増していくうちにふと思った。スマホなんて見なければいいのだ、と。

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翌朝、私はスマホを触らないことにした。
通知音が鳴っても無視。後日「スマホが故障しててー」と、誤魔化せばいいだけ。
私のデジタルデトックスが始まった。

決意してからの行動は早かった。

まずはスマホを見ずに朝食。
スマホを気にしないだけで、こんなにスッキリご飯を食べられるのか!
爽やかな気持ちで食事できたことが嬉しかった。

次は溜まりに溜まった家事。無心で家事を一つひとつ丁寧にこなした。

ご機嫌なうえに、部屋が少しずつきれいになっていくことで、さらに気持ち良かった。
家事を一通り終えて、「さて、今何時だろう?」
時間を確認しようとスマホに手を伸ばそうとした瞬間、ハッとした。

私は無意識にスマホをいじろうとしていた。

スマホを視界から外そうと、私は別の部屋にある壁掛け時計を見に行った。

それからも机に置いてあるスマホに意識が向いてしまった。

「いかんいかん、今日はデジタルデトックスするんだ!」

そう言い聞かせて、別のことに意識を向けた。しかしこういうときに限って、スマホが気になって仕方がない。

家にいるとスマホのことが忘れられなかったので、外に出て大好きな犬カフェへ向かった。

犬カフェにいれば、スマホを忘れて可愛い子犬たちと遊ぶことができる。

そう思っていたが可愛い子犬の写真を撮りたいと思い、ポケットや鞄の中を漁った。

「あれ?スマホどこいった?」 

スマホを家に置いていったことに気付き、ここでもハッとした。
まただ、まるで条件反射のように、体がスマホを求めていた。

私はすでにスマホと縁の切れない存在、いや依存の状態となってしまった。

子犬たちと触れ合えて幸せだったはずなのに、モヤモヤしたまま帰宅。
せっかくの癒しの時間も、どこか上の空だった。

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帰宅し、真っ先にスマホを開いてしまった。
最新の通知は天気予報くらいで、あのグループLINEからの連絡はなかった。
それが私をさらにがっかりさせた。
私がスマホを触っても触らなくても、今の状況は変わらなかった。

どちらに動いても結果が変わらなかったことから、スマホもそうだが私自身が
そこまで重要な存在ではない、と自責をしてしまったほどだ。

朝は快適だった私のデジタルデトックスは、後味悪いまま終わってしまった。

今も引き続きスマホに助けられている。もしかしたら、スマホに操られているのが適切かもしれない。

しかしあれから、少しずつあらゆるものと適切な距離感を取ることを意識している。
人もスマホも、距離感ゼロになると衝突が起きてしまう。

依存ではなく共存のスタンスで、日々を過ごしていきたい。 
スマホも人との距離も、自分らしく保ちながら……。