ありがとう。つらい恋の先に見えるものが、あなたへの感謝でよかった

まず真っ先に思い浮かんだ彼への言葉は「ありがとう」だった。
2年付き合った彼との別れ。遠距離恋愛を経て、彼が住む土地へと引っ越してきたあの日。お互いの生活を尊重して一緒には住まずに過ごしてきたが、それなりに仲良くやってこれたと思う。彼のおかげで私の世界は広がったし、自分の可能性にも気づくことができた。新しい発見も人との繋がりも、毎日がキラキラと輝いた。
だからこそ、彼への「ごめんね」も痛いほどに溢れ出た。仕事などが理由で生活リズムが合わずにすれ違いが起こり、3ヶ月以上会えない日が続いた。連絡頻度も前より減ったことが寂しかった。仕事で忙しいのは彼が頑張っている証拠だとわかっていたのに。会う頻度や連絡の内容で愛を測ったりしたくないのに。お互いが描く未来が違うとわかった日から、少しずつ、本当に少しずつ、お互いの心に隙間ができるようになったのだろう。
いつか何かで埋められると思っていたその隙間は、やがて大きな穴になり、再び塞がることはなかった。もしかしたら、そんなことを思っているのは私だけだったのかもしれない。彼は彼なりに歩み寄ろうとしたのかもしれない。だからこそ、最後の会話で「誕生日何欲しいって聞こうと思った」と、来週に迫る私の誕生日のことを考え、話してくれたのかもしれない。
ずっと待てなくてごめんなさい。支えられなくてごめんなさい。沢山の思い出や感情が溢れ出てくるのに、何故か涙は出てこなくて、自分の心がどこにあるのかわからなくなった。
ずっと会ってないし、連絡も少ないのだから、今別れてもあまり傷つかないだろうと思っていたのに、そんなのは大間違いだったのだ。だって嫌いになって別れたわけではないのだから。そりゃそうだ。でも、好きという気持ちがあるかと聞かれるとまた違う。これまで待てた理由は、きっと情になってたからだ。「なんでまだ付き合ってるの?」なんて周りから聞かれることは沢山あったけど、彼の良いところも悪いところも私しか知らないんだから、他の人は黙っててよ、なんて思ってた。でもよく考えたら、「彼のことを1番に理解しているのは私だけ」なんて考え自体が間違ってて烏滸がましかったのかもしれない。
別れを切り出した側ってこんなに辛いんだっけ、なんて夜中にふと一人思った。彼の今の気持ちを想像したら余計に苦しくなった。でももしかしたら、意外とあっさり考えてるかもしれないし、そればかりは本人じゃないとわからない。彼のことを思って、彼の気持ちまでも背負おうとすると更に苦しくなる。だから、まずは自分の気持ちを素直に受け止めて、幸せを掴むためのチャンスを見落とさないようにしなきゃって思った。
つらい恋は、正直まだ続いてる。でもね、大丈夫。私たちの歩む道はこれから違えど、それぞれが幸せになれるって思えるから。彼に出会えたこと、付き合えたこと、沢山笑って、沢山一緒にパスタを食べて、沢山バカやって、共に過ごせた時間はたしかにあったし、なにもかもが幸せだった。
この恋の本当の終わりはまだ見えないけど、私たちが恋に落ちたあの時みたいに、導かれるままに、それぞれが思うがままに、進んでいくんだと思う。
本当に今までありがとう。この恋の先に見えるものが、あなたへの感謝でよかった。どうか幸せになってね。沢山笑って過ごしてね。愛よりも深い場所に、この言葉を置いていきます。
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