私は小学生3年生の時、同じクラスの男の子と仲良くなりました。
話が合うし、面白いし、一緒にいて楽しい。
授業中に手紙で会話してたら先生に2人でこっぴどく怒られ、泣いてしまった私を優しく慰めてくれました。
彼との思い出は数えきれないほどありますが、思い出深いのはどうぶつの森というゲームを一緒に遊ぶことでした。当時は携帯電話を持っていなかったこともあり、ゲーム内で待ち合わせして、チャットで話すのが毎日の楽しみでした。毎日1時間ぐらい話して、会話が途切れることもなくて、終わりの時間がちょっぴり寂しくて。
ある日、お開きする直前に「好きだよ」と送られてきました。
「私も好きだよ」
この会話をする頃には、友達の好きではありませんでした。
大好きな人と過ごす楽しい毎日。だけど、私は大きな勘違いをしていた
5年生の時、宿泊学習の際にみんなが寝静まっている中、こっそり抜け出して待ち合わせした時のドキドキは今も忘れられません。
並木道を一緒に帰って、別の電車に乗る彼と何度も目を合わせてはどちらかが電車に乗るまで何度も手を振りました。
「また後でゲームで話そうね!」
これが私の大好きな人と過ごす毎日でした。私はずっと幸せで、一緒に居られる時間が宝物でした。
私は当時、1つ大きな勘違いをしていました。それは、恋愛は恥ずかしいということです。
当時の私と言えば、少女漫画よりゲーム、友達とのお喋りよりサッカーを選ぶような女でしたから、恋愛について全く知識がありませんでした。彼の事が好きになってからも、一緒に過ごす時間があるだけで満足しており、その先にある恋人とか付き合うとかにあまり興味がありませんでした。
しかし、周りはそうはいきません。学年が上がるにつれ噂話が流れるようになったり、2人でいるところを見られると、周りの人からイジられたりすることがありました。
私はそれらをスルーすることができず、イジってくる男子には顔を真っ赤にして怒っていました。堂々としていればイジられることもなかったと今となっては思うのですが、なんだか恥ずかしくて、私には我慢出来なかったのです。
そんな私を気遣ってくれてたのか、帰る時はいつもあまり人がいないタイミングを見計らって帰ってくれていました。
変わらない私たちを取り巻く環境は変わり、一層人目を気にするように
そして小学校を卒業し、私達は同じ中学校に通い始めました。中学生になったからといって関係性は何も変わりませんでした。変わったことといえば、彼が携帯を買ってもらい、ゲームで通信しながら会話することがなくなったくらいです。
けれど、周りの取り巻く環境は大きく変わります。知らない同級生も増えて、私はより一層人目を気にするようになりました。
それでも、一緒にいる時間の幸せは変わらず、帰る約束をした日には学校が終わるのが待ち遠しくて仕方ありませんでした。
ある寒い日の帰り道、私達は手を繋いで帰りました。部活帰りで辺りも暗かったので、人目も気にすることなく、私達だけの幸せな時間が流れました。
その時、彼からある提案がありました。それは手を交互に絡ませる繋ぎ方でした。こっちの繋ぎ方の方が暖かく、彼の熱が伝わってきたような気がしました。
しかし、恋愛知識ゼロの私はそれを恋人繋ぎと呼ぶことを全く知りませんでした。私はあまりに無知だったのです。
そんなある日、事件が起きました。私は携帯を学校に置き忘れてしまい、メールのやり取りを友達たちに全部見られてしまいました。さらにタチの悪いことに、彼女達は一才悪びれもせず、携帯を返してきたのです。私は怒りと恥ずかしさで胸がいっぱいになりました。
この事を知った彼は、その友達を怒ってくれました。その事が心の底から嬉しかった。私は彼に何度も感謝と謝罪を伝えました。
けれど、私は友達に怒りをぶつける事ができず、引き攣った笑顔で彼女達を許してしまいました。今でもこの時の、人目を気にして何もできなかった自分を思い出すと自分のことが心底嫌いになります。
付き合おうと言って始まったわけでもない関係は、ただ静かに終わった
そしてこの事を期に、私達は次第に会話が減っていき、帰る頻度も少なくなり、ただの同級生になりました。この関係自体どちらかが付き合おうと言って始まったわけでもなかったので、別れ話をすることもなく、ただ静かに終わりを迎えました。
私はこの幸せな思い出に蓋をしました。そのおかげか私の周りには、私と彼の関係を知っている人はほとんどいません。私は彼氏がいた事がないとずっと嘘をついています。いや、最初は嘘をついていた自覚はあまりなかったのかもしれません。あの頃の私にとって彼は世界で1番好きな人で、それを恋人と呼ぶことを知らなかったのです。
私は後悔していることがあります。それは恋を知るのが遅すぎたことです。恋は恥ずかしいものなんかではなく幸せなことだと知って、人目を気にせず彼の隣を堂々と歩いて、恋人だって、付き合ってるって言えていたら、もしかしたら違う結末だったのではないか、もしかしたらもっと一緒にいられたのではないかと考えてしまいます。
恋人繋ぎをしてくれたあの夜でさえ、恋人として扱ってくれていた彼の気持ちに気づけず、自分の気持ちの正体にも最後まで気づけなかった私を私は大嫌いです。
彼に言えずに溜まった沢山の「ありがとう」と「ごめんなさい」
私には彼に言えずに溜まった沢山の「ありがとう」と「ごめんなさい」があります。
私の歩幅に合わせて隣を歩いてくれてありがとう。
堂々と隣に立てなくてごめんなさい。
相合傘の狭さを教えてくれてありがとう。
肩が濡れてしまっていたことに気づけなくてごめんなさい。
恋人繋ぎの温もりをありがとう。
その暖かさの意味を知らなくてごめんなさい。
私を好きになってくれてありがとう。
恋を知らなくてごめんなさい。
私は今、皮肉にも恋に恋をしています。人の恋愛話を聞いては、「私にもいつか恋ができるかな」なんて言いながら。誰よりも幸せな時間をくれた彼との思い出こそ、私にとっての誰にも言えない恋のお話です。いつか、このお話をする機会があったら、まず最初にこの思い出をくれた彼と語り合いたい。そして伝えたいです。
あの頃の私は、貴方のことがずっと好きでした。今なら分かります。その好きは恋としての好きでした。