30歳、社会人留学。たら、ればは腐るほど出てくるけど、前に進むしかない

私はいま30歳で、会社を飛び出してドイツに留学している。
10歳下の学生の友人ができたり、新しい言語を学んだりと、とても大変な日々を送っている。ヨーロッパの地に足を踏み入れたことがなかったのと、大学在学中から留学生へのボランティアをしていて、移民受け入れ大国のドイツに興味があったので、大学卒業時点で、社会人経験を積んでから、ふんわりドイツに留学したい。という思いを持っていた。会社の制度もあり、休職して、留学をすることになった。大学の合格通知が届いたときは、手が震えた。上司に伝えるときも、おっかなびっくり報告したが、ステップアップのためだし、とのことで快く了承してくれた。
1年経って、焦りがでてきた。前職の仕事ではこれといってなんのスキルも手に入れていない、一般的な書類作成のスキルだけ。営業もしたことがなければ、プログラミングもできない、プレゼンもしたことがない。
そして、AIの普及がどんどん進んで、あと5年もすれば、事務職である私のポジションはほとんど必要がなくなるなということをひしひしと感じている。英語を勉強して、ドイツ語も勉強しているけれど、それが戻っていかせる会社ではない。今後どうすればいいんだろう、と今路頭に迷っている。
周りを見れば、ドイツ人で、英語が話せて、フランス語が話せて、それ以外にもう一つの言語が話せるのは一般的にみられること。ヨーロッパの人たちは、どうやらマルチリンガルの人がとても多い。私は四苦八苦しているけれど、二十歳そこそこの子たちが、英語圏出身の子でなくても、英語で論文を書いて、プレゼンして、生活している。
ヨーロッパにいるということは、そういうことなんだなと思った。大学に入れる子たちは母国語と英語はほとんど当たり前。大学に入らない子でも、日常会話位はできる人が多い。
日本にいれば、少し英語が話せたら、すごい、といわれるけれど、ここでは当たり前だった。
ほとんど10歳違う子たちに囲まれる日々。周囲にいる彼らの持つ若さは私にはない。周囲もアジア人は若く見えるねと言ってくれるけれど、それでも年齢の差はなくならない。彼らは30歳まで10年ある。私は10年たったら40歳だ。親がもっと高齢になって、介護が必要になる可能性も高くなる、パートナーもいない、ということで絶望を感じた。
この年での留学は、人生の振り返りの良い機会にもなっている。人づきあいは苦手で、計画性がなくて、人に頼ってばかり。親にも金銭的にも、感情的にも頼っている。
だからこそ、経験を決して無駄にはしない。去年の授業の知識も、語学のスキルも、後1年でもっと習得していく。ドイツで働いて、両親に還元したい。家族も作りたい。英語で話すのが苦手なのは少しマシになってきた、人前で話すのが苦手なのはわかっているから、次の学期はもっとプレゼンがある授業を受ける。今後自分の専門性を身に着けたいから、データ系の授業を取る。
働いて5年してから始めた留学。もっとはやくしておけばよかった、もっと事前に調べておけばよかった、とも思った。特に今の円安を考えると、少しずつ円からユーロに換金しておけばよかった。たら、ればは腐るほど出てくる。でも、もうこの留学は始まっていて、1年もたっていて、変えられない。ただ、やりたい授業は受けられているし、将来やりたいこと、家族のことも客観的にみられるようになった。これをプラスにして、どこでも生きていける人になりたい。
30歳、私、進むしかない。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
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