「日本ってどんな国?」。問われて気づいた日本を知らない自分の存在

恥ずかしい話、留学へ行くまで私は日本は外国からどんな風に見られていて、何が有名で、なんて考えてもみなかった。授業で言えば、歴史なんかもあまり得意ではなくて、試験前の詰め込みで暗記する時だけ本気を出して、終われば頭の中からはすっかり抜けてしまうような感じだった。日本で当たり前のように生活しているし、大抵の日本の話であれば、わかるし、答えられるだろうと安易に考えていた。
高校3年生、タイへ留学。
外国人である私に対しての周囲の反応としては、まずは知っている日本語をポンポンと言われる。きっと、そうそうそれは日本語だね、日本のことだねと反応するのが正解。
タイでは「アジノモト」と言われることが多くて、味の素はわかるけど、なんで味の素をみんな知っているのだろうと、あまり味の素に親しみのなかった(使っていなかった) 私には不思議だった。生活をしてく中で知ったのは、味の素はタイでも非常にポピュラーであり、むしろタ イ料理によく使われているということ。日本の調味料が浸透していることに驚く。
同級生にふいに聞かれた。
「ワンオクロックって知ってる?」その当時、私は知らなかった。知らないと答えると、「本当に日本人?」と小馬鹿にされてしまった。好きな音楽も歌手もいるけれど、当時はむしろ世界的にも有名であるようなミュージシャンを知らなかった私。好きじゃなくても、有名なミュージシャンは知っていた方がいいのだなと思った。
またしても同じ同級生。「ハシマって知ってる?」今ではすっかり有名になった、長崎県の端島、「軍艦島」と呼ばれる島だ。その当時は、今のように話題にもなっていなかったし、地元から遠く離れた島のことを知るはずもなく、知らないと答えた。話を聞いていくと、どうやらタイの映画で、端島を舞台としたホラー映画が公開されたらしかった。 日本人の私でも知らないような島を、よく舞台にするものだと思った。
たまに聞かれる「日本の宗教って何?」 タイは熱心な仏教国で、人々の生活の中に強く深く根付いている。至る所に豪華絢爛な寺院があり、ことあるごとにお参りに行く。友人同士で遊んでいる時に、行くこともある。タンブンとよばれる徳を積む行為をよくする。
例えば、いくらか支払って鯉に餌を与えたり、カゴに入れられた鳥を、カゴの扉をあけて外に放したりする。
そして、当たり前のように、日本の宗教は何かと聞かれる。高校生で、特に自分の宗教なんて気にしたこともなかったし、そもそも自分が何かの宗教を信じている、属しているという感覚もなかった。神社にもお寺にも行くし。これは多くの日本人が直面する壁だと思う。
特別意識をしたこともなければ、真面目に歴史を学んでこなかった私には、その手の質問をされるのは、なかなかに苦痛だった。しかも、それに加えて、拙い英語やタイ語で説明をしなければならないから、余計だ。
他にもあまり覚えていないけれど、きっと多くの日本について聞かれてきた。日本の文化について、日本語について、食べ物について、有名人について、アーティストについて、政治について、地理や観光について。
時に、日本に関する一つの分野に関して、好きでとても詳しくて、私が知らないようなことも知っていて、あまりにも無知な自分を恥ずかしく思うこともあった。それほどまでに、私は、これまで自分がどこでどう生きてきたのかを、見てこなかったんだなと思った。もちろん、日本人だからといって、日本の全てを知ることは不可能だし、その必要もないとは思うけれど。
時に、旅行で、留学で海外へ行った時、たまたまそこに日本人が自分しかいない時、その空間の中では、自分が日本の代表であるかのように、答えを求められることがある。
タイへ行って、今まで知り得なかったタイのリアルを知ることができたのと同時に、強く実感したのは、私は日本人だという自覚があまりなく、日本について知らないことが多すぎるということだった。恥ずかしい経験を沢山してきた。
日本とは、日本人とは、と知ることは、最終的に自分の考え方やルーツを知ることでもある。知らないことが必ずしも悪いとは思わないけれど、知ることで世界も広がるし、自分というものもより深く知ることが出来る。
つまりそれは、対等に、世界の人と話すことが出来るということに繋がるのだと、留学の経験が教えてくれたような気がする。
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