偏食と思いたくはないのだが、おそらく私は食べられないものが多い。

ビストロでバイトをしており、退勤後はオーナーが賄いを作ってくれるのだけど、私の食べられないものないし嫌いなものが多すぎてだいぶ迷惑をかけてしまっている。

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まず、チーズが大嫌いである。固形もとろけるチーズも粉チーズもだめ。そこから派生して、食事系にバターや牛乳が使われているのも好きではない。シチューやレストランのオムライスがこれにあたる。スイーツに使われている生クリームや焦がしバターたっぷりのフィナンシェは大好きなのだけれど、バターの塊(例えばバターサンド)はダメ。

要はしょっぱい乳製品が苦手なのだ。

辛いものも苦手である。生まれの宮崎県は辛麺の発祥地なのだけど、まともな辛麺は食べれない。一応、辛さのレベルとスープベースは選べるので、初めて食べたときは1辛のオリジナルスープを試したがギブアップした。以降、0辛のトマトスープを注文している。友人からは「普通にトマトラーメン食べに行けよ」と言われる。ごもっとも。
加えて甲殻類と軟体類のアレルギー持ちなので、エビカニイカタコ貝が食べられない。元々スルメが大好きだったし、お寿司屋さんでは必ずあさりのみそ汁を食べていたのに、中学生のある日、突然すべてダメになってしまった。父親が全く同じアレルギーなので、遺伝なのは仕方ない。食べると口腔内が痒くなるので、医師からは「症状が肌じゃなくて口腔内に出るということは気道に関係するので、気をつけて」と言われた。

余談だが、下戸なのでお酒も飲めない。

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以上を踏まえて、私は和食以外の食のジャンルが断たれてしまっている。タイ料理屋さんに行ったとき、メニューの端から端まで、エビかカニか辛味が含まれていて、結局タロイモプリンしか食べられなかったという苦い思い出がある。ハワイアンのレストランでロコモコプレートを頼んだときにはプレート全体に粉チーズがかかってきたし、イタリアンで食事をするとなると、ほとんどにチーズが入っており、さらに甲殻類と辛いモノを除くと食べられる料理は消去法になる。横浜の元町中華街で小籠包を食べたときにはエビが入っていて、アレルギー反応が出た。

そういう理由から、私は海外に行ったことがない。

高校生のとき、私が通っていた国際関係の学科では留学に行くのは割と普通で、クラスの半分が短期留学に行っていた。私は世にも珍しく「英語を好きで勉強しているくせに、食が合わないという理由で海外留学を断った」人材なのだ。
ちなみに海外に行きたい欲はある。今はスペインとカッパドキアに行きたい。しかし、万人が海外に行く目的ランキングで1位の観光に次ぐ2位のグルメを、私は恐らく堪能できない。

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こういう話を留学経験者や旅行が趣味の方に話すと「味噌汁持って行きなよ。現地にも日本食材を扱ったスーパーもあるし」と言われる。

そういうことじゃない!海外に行く醍醐味にグルメも含まれているだろう!何が嬉しくてわざわざスペインに行ってパエリア眺めつつ味噌汁をすすらなきゃならんのだ!そういうことじゃないんだよ!!
……と、心密かに思いつつ「確かに〜」と笑顔で答えている。