一泊二日の温泉旅行に行く予定があり、そこでちょうどデジタルデトックスしようと思っていたので、その時のことを書いてみようと思う。

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なんというか、スマホってタバコみたいなものなんだなと思った。
私はタバコを吸わないが、飲み会の時や話している時に手持ち無沙汰になり、それを補うようにタバコを吸っている人をよく見かける。
そんな感じで、一コマ一コマの間に、余計なスペースが生まれないようにスマホを見ていたんだなと気が付いた。
例えば会話が途切れたとき、相手がトイレへ行ってしまったとき。例えば信号が青になるのを待っているとき、電車内で儀礼的無関心を装いたいとき。例えば……。こういう風に日々の小さな空白を埋めるように、私はスマホを見ていた。

温泉旅行に出かける際、さすがに電車の時間を調べたり、写真を撮ったり、返さなきゃいけない連絡をするのは可として、それ以外は極力見ないようにした。

結果としては、できた。「スマホを何時間も見てしまった~汗」なんていう事態には至らず、スクリーン時間も39分と、特に苦を感じずに達成することができた。

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けれどそれは、ほかにやることがあったからだと思う。
まずは温泉卓球。せっかくお風呂に入ったのに汗だくになるまで何セットも真剣勝負をした。それから露天風呂。様々な種類の露天風呂に入っては、ほんとうにあるのかわからない効能を感じた。そしてサウナ。サウナ→水風呂→外気浴というルーティンを時間も図らず、「苦しくなったら」とか「喉が渇いたら」とか適当な理由で切り上げて、サ活もどきを楽しんだ。まだまだある。豪華すぎる食事をゆっくり食べお腹一杯なのに部屋に戻ってからも案の定「第二ラウンド」とか言ってビールで乾杯し、夜食を食べた。
恋バナをして、彼氏の愚痴を言って、次の旅行の計画を立てて、未来の話をして。
そういう風に、やること(やりたいこと)が十分用意されていたから、24時間スマホを見ずに過ごせたのではないかと思う。

また、相手の協力も必要だ。今回私は一緒に行った相手にデジタルデトックスする!と宣言していたのでうまくいったが、話し相手がいなければ私は早々に諦めてスマホの世界へいざなわれていただろう。美しい景色やおいしいご飯を共有する相手、とりとめのない会話をしてくれる相手がいてこそ、この企画は成り立ったように思う。

青々とした緑が広がる広大な木々たちと、窓から差し込む柔らかな日の光、下の方で流れる穏やかな渓流。そういう風景を写真に収めたくて、窓からパシャリと写真を撮る。でもその写真を見て、やっぱり写真よりも、肉眼で見るのが一番いいなあと感じる。

どんなに高画質で、どんなにきれいな写真を撮ったとしても、私の記憶の中の景色には劣っていた。それはその時の感情や記憶が、ちゃんと景色と連動されているからだろう。脳裏にある景色と旅の思い出を重ねることが、デジタルデトックスを行ったことによってスムーズにできた。

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スマホは、一日に処理できないほどの情報を私たちに叩き込む。たちが悪いのは、それらが面白く刺激的であることだ。時間も忘れて、架空の世界に入り込んでしまう。でもそんな日々を繰り返していると、時々すごく不安で取り残されているように感じてしまう。

そんな時、一度スマホから離れて、現実世界を歩いてみる。すると、スマホの世界よりもずぅっと鮮やかで、目も痛くならないことに気が付くのだ。

ちなみに朝起きて一番にしたことは、インスタ用の写真の加工だ笑。文明の利器にはあらがえなかった。とはいえ、現実世界はもっと豊かで、もっと美しいことを知れたのが、この企画の一番の収穫だ。