私には、みんなの当たり前がない。24年間治る信じて毎日薬を飲んで身体に軟膏を塗り続けた。そんな私は今、何もしていない。綺麗になる夢は実現できなかったからだ。

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「アトピー性皮膚炎ですね」。もう何度聞いたかもわからないくらい言われ続けた診断名。
まれてすぐの頃から関節周りを痒がり湿疹が出始めたのだとか。

幸い顔や見える部分には出ておらず、服やストッキングなどでうまく隠し対応できていた。
病院では、成長とともに治りますと言われ、その言葉を信じたまま小中高と過ぎていった。
成人を迎えた今の私は、歳を重ねて関節周りだけだったアトピーは虫のように正常な肌にまで這広がり汚らしく侵食されてしまった。

温泉が好きな私が風呂に行けば、当たり前だがヒソヒソとした会話のあとに、静かに洗い場に移動させられたものだ。

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自分は醜い。綺麗になりたい。そう思い治療だけでなく漢方も試した。
努力をして悩むことは私を含めた多くの女性が、ニキビだったり肌荒れや今の時期であればあせもなどの肌トラブルに見舞われて経験したことがあると思う。

それでも掻き傷の無い綺麗な手足、季節に合わせて増える肌露出。
同年代の子やSNSで見かけるキラキラした女の子たちを見るたびに性格まで歪んでしまった。心がぐにゃぐにゃに溶けて真っ黒になってしまうくらい嫉妬して羨んで、泣いてきた。

変わりたくて、口コミを見ては新しくできたクリニックに向かった。もう貴方が最後の砦だというばかりに縋りたい気持ちで。それでも状況は変わらなかった。

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どの季節にどの医者に寛解増悪関係なくどのタイミングで見せても、みんな「アトピー性皮膚炎ですね」と、回答は同じだった。
ドクターも全知全能の神ではないので固定概念もあるかもしれない。
出る薬も同様で、決まった飲み薬に決まった軟膏。続いている決まった症状。
それなのに、月日が経つにつれて自分の身体に広がる傷跡の範囲が増えていく。
汚い傷跡を鏡で見るたびに肌に自信をもてなくなり心を蝕まれていった。

次こそは治るかもしれないと期待するたびに変わらない現状に裏切られたように感じ、繰り返すことにもう心が折れた。

私は、頑張っていたんだと思う。

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変わらない現状に頑張り続けることや周りの辛い対応に立ち向かい気にしていないフリを続けることは諦めることより難しい。

世の中には、私だけじゃなくてあなたの当たり前に憧れている人がいっぱいいる。

お金と時間と年月をかけて、みんなと同じになりたいと望む人がいる。そして、もう頑張れなくて諦めてしまった人がいる。それを知って欲しい。そしてほっといてほしい。

平成の時代よりは周りの目は緩やかになった。しかし、未だに理由も知らずなんの病気かもわからないのに「見て!あの人の身体汚い」や「うつるから近寄らない方がいいよ」など決まった言葉を聞く。

温泉によっては刺青と同様に皮膚病の方はお断り。なんて看板が立っている場所もあるくらい。

好きで汚いんじゃない!人にうつる病気では無いのに知らないくせに勝手を言うな!本当はそう思っている。
でも、聞こえていないかのように涼しい顔をして浴室をでていたとしても。
普通に傷つくしこちらが全て悪い気がして言いたいことも言えずの現状は辛い。
変われない自分が辛い。また頑張る日々に戻るのがこわい。だから私は、また頑張ろうと思える日までは肌を隠して静かに綺麗になりたいという夢はおやすみしよう。そう思うのだ。
今は辛いだけで私はまだ蝶にはなれないのだから。