就活を彷彿とする声優業界の厳しさと、改めて実感した応援する喜び

私は中学1年生の時声優を夢見ていた。
しかし、夢見た程度は、小さな子供が、お花屋さんやケーキ屋さんをやりたいと言い出すレベルである。
なぜ私が声優に憧れたかというと、中学生の時、私は少年漫画原作のアニメをよく見ていた。複数作品見てると出演している声優さんが、一緒だった。その声がかっこよくて、声優に憧れたのではなかっただろうか。
それではなぜ、声優を夢見るのをやめたか?
あまり内容を詳しく覚えていないが、中学校の総合学習の時間で、お仕事ドキュメンタリー番組を見た。取り上げられていた仕事は、声優だった。
そのドキュメンタリー番組の内容は覚えていないが、出演していた駆け出しの声優さんがとにかく経済的に大変そうだった様子を見て、私には無理だと思い、あっさりと声優を夢見るのをやめた。
時は流れ、10年後私は、社会人になった。声優という職業を目指すのはやめたけど、アニメも見ていたし、声優さんのイベントやライブには足を運んでいた。私は仕事で、電話対応を行うことがあった。自分の録音した声を聞くと、恥ずかしくて悶えてしまったり、正直自分の声は気持ち悪いなと思うことがあった。自分の声に自信がなかったので、声優を目指すのはやはり難しかっただろうなと今でも思っている。
社会人になった数年後、コロナ禍になり行く予定だった声優イベントは全て中止になった。
コロナ禍に入った初期、私は呑気なことに夏になればまた声優イベントに行けるようになる、いけないなら、全国のラジオが聞けるアプリに課金し、前からSNSで名前だけを聞いたことあるけど気になっていた声優ラジオ番組聞いてみようと思った。結局夏になっても、声優イベントに行くことはできなかったのだが。ラジオアプリの課金ならイベント行くよりコストも安上がりだしだと思い軽い気持ちで聞き始めた。
そのラジオは所謂、声優界で言えば中堅に位置する男性声優さん二人がラジオパーソナリティをしていた。その人達は様々な女性向けコンテンツに出演しており、私の好きなタイトルにもメインキャラクターとして出演されていた。コロナ禍前は毎週のようにイベントに出演し、有名タイトルゲームにも出演しており、二人とも声優として順風満帆に見えた。
けれども、ラジオ内に挟み込まれるトークエピソードから声優界の厳しさを感じられた。
声優さんは仕事を得るためにオーディションを受ける。そのオーディションについてのエピソードがあった。仕事現場にいて、自分がオーディションに落ちたというメールが届いた後、オーディションに通った連絡が届いている人を近くでみかけてという話や、所属事務所によってオーディションが来る数が違う話、出たいなと思った作品が、オーディションすら受けられなかった話、所属事務所によっては、オーディションを受けるためのオーディションがあるという話、挙げ始めるときりがないが、新卒の就職活動を彷彿させる厳しさである。
新卒の就職活動がうまくいかなかった私にとっては、様々なトラウマが思い出され胃がキリキリした。それをアニメ作品なら、1クール(三ヶ月)ごとにしているというと、目が回る。
今まで私はまだまだ声優という職業の綺麗な上澄みしかみれてなかったんだなと思った。
結局受け取り手はこの声がキャラクターにあってるかあってないかだったり、毎クール何本出ているか、人気タイトルにどれだけでているかでしかその人を評価できない。選ばれるまでの過程なんて知りやしないのだ。それは、新卒の就職活動も一緒だ。
そんな苦労を話してくれたからこそ、パーソナリティ二人が新しい仕事をつかんだ時は嬉しかったし、ラジオ内で話してたこんな作品に関わりたいと話していた夢が叶ったときは嬉しかった。
声優を目指さなかったけど、厳しさを知ったからこそ、応援している人が新たな仕事を得た時、出たい!を叶えた時、嬉しいんだと知った。
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