スマホを使わずに済んだ日なんて一日たりともない。充電不足で使えないなんてことはあり得ないし、家に忘れた日には電車の遅延とかゲリラ豪雨とか、地震とかとにかく何もないように祈って、その日は寄り道なんてできない。

どんな友人より家族より彼氏より頼りにしている。それくらい手離せないものだけど、毎日使うものだからこそ、突然壊れてしまうこともあるし、どうしようもない事情で離れるしかないこともある。

突然、壊れてしまったものはどうにもならないけど、それでもお仕事や予定は変更できない。不安でも出かけるしかない日もある。

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私が初めてスマホを持ったのは高校入学の時だった。高校生になり行動範囲が広くなったことで必要になったものだった。最初こそ持て余していたが、ゲームも検索もアラームもストップウォッチもすべてこなしてくれるスマホはアッという間にが手放せなくなった。

10年近く持ち歩いているものだが、ふと危機感も感じていた。便利で何でもできるスマホは電車移動や日常生活ですごく役に立つが、制限なく時間を使えてしまう。ゲームだってたくさんできるけど、サービス終了となったら何も残らない。

そんな一面に不安を感じていた時、スマホが壊れて動かなくなってしまった。調子が悪いのが自分の体調ならお仕事をお休みするけど、スマホが動かないだけでお休みすることはできない。

スマホが壊れたその日が、スマホを持ち始めたから、初めてのスマホのない一日だった。

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いつも通りのルートでお仕事に行って、お仕事をして、行きと同じルートで帰宅する。毎日、ほとんど無意識にやっているような様々なことが、1つずつ問題がおきないように祈らずにはいられない日だった。

普段は帰宅するルートの途中で買い物や食事をして帰るが、その日はお店を調べることもできないし、新しいスマホだけ購入してすぐに帰宅した。振り返ればなんてことはないのかもしれないけど、当日は朝からずっと不安だった。

そして、その不安の根源は、電車の遅延や連絡、回避策を調べられないといった問題が起きた時の対処ができないからだったと思う。スマホのゲームだって毎日のログインボーナスはもらえないけど、そんなことを忘れるくらい、不安で一日がとても長く感じられた。

連絡も予定の確認も、SNSもXも一つあれば大抵の事柄に対応できて、どれだけでも時間を使ってしまえるスマホは確かに危険な一面がある。わざわざ外出しなくても休日を過ごせてしまうけど、外出した日の方が心地よい疲れだったこともある。

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スマホの便利さは、多くの場合、その他の選択肢を消してしまう。危険もあるスマホだが、スマホの壊れたあの日、私を不安にした理由は、急な出来事への対応ができないことだった。

スマホのない時代だって、電車は動いていたし遅延もしたのだから、どうにか出来ないことはない。そういってしまえばその通りだ。しかし、たまたま目についたお店を調べてみるとか入ってみる、知らない駅で降りてみる。そんな冒険ができるのも、頼りになるスマホがあるからそこだと思う。