「声を大きく」と言われショックを受けた私が始めたボイトレ

私がいつの間にかコンプレックスに感じていたのは、声が小さいということだ。仕事で十数人の前で説明をするという機会がたまにあり、なるべく大きめの声で話すことを意識していたが、あとから上長に「次からもう少し声を大きくしてもらえますか?」と言われた。
前職でも同じようなことがあり、話す内容の方に集中してしまっていたのか、いつの間にかトーンダウンしていたらしい。「ちょっと声が小さいです」と言われてしまった。前職でのこともあり、今の職場ではなるべく大きめの声で、しっかりと話すということを心がけていたので、「声を大きく」と言われショックを受けた。
たしかに、私の声は女性にしてはやや低めで響く声質ではない。かと言って、声量MAXで話しているとすぐに声が枯れてしまう。人が大勢いる場でも声の通る人がうらやましいと感じていた。
声が小さいと初めて言われたのはいつ頃だろう?たしか大学生の時に友人や後輩に言われた記憶がある。むしろ、小学生〜中学生時代は声が大きいということで注意を受けたことすらあった。特に笑い声がデカいとよく言われ、それは今でも同じだった。友人の住むマンションに遊びに行き、一緒にテレビを見ていた時、私の笑い声がデカかったらしく「隣から苦情が来ないかハラハラした」と言われた。
中学時代に話し声が大きいと言われたこともあり、それ以降なるべく小さい声で話そうと気をつけていたことも影響しているのかもしれない。今では大きな声で話すことが難しくなってしまった。
声量がない、すぐに声が枯れてしまうというのは仕事上も何かと困る。地味にコンプレックスに感じていたこともあり、いっそのことトレーニングをしようかと思った。街なかで「ボイトレ」の看板をたまに見かけることを思い出し、そういうスクールに通うのもアリかと考えた。
さっそくボイトレのスクールについて調べると、最寄り駅の近くに3件もあることが分かった。そのうちの1つに、「話し方」について学べるところがあり、声量をアップしたい、滑舌がよくなりたいといったニーズに対応しているスクールだった。プロの指導を受ければ何か変わるかもしれないと思い、私はさっそく無料体験レッスンを申し込んだ。
話し方のレッスンは、期待以上のものだった。歌う前に行う発声練習のようなことをするだけかと思っていたが、声はどこを振動させて出ているものなのか、どのような声の飛ばし方があるかなど、発声の仕組みをマンツーマンで分かりやすく教えてくれた。ここに通えば声が小さいのを克服できるかもと思い、私は1ヶ月ほど前からそのスクールに通っている。
レッスンを通して新たに分かったのは、私の声は低い方ではなかったということだ。落ち着いた声質ではあるが、実際に電子ピアノで音に変換してもらうとわりと高めだった。声が高めで体型も小柄な方のため、声を響かせるのは少し不利だとのことだった。それが分かっただけでも、私は気持ちが楽になった。
不利な条件を兼ね備えていたものの、声の出し方によってカバーできるということで、今は鼻腔と口腔の両方を活かした発声練習と、声量アップのトレーニングを行っている。鼻腔を使うというのは、鼻にかかった声を出す方法で、電車の駅員さんがアナウンス時に使う話し方だ。高い声の方が鼻にかけやすいそうで、声の特徴を活かしつつ、なるべく不自然にならないような形で声づくりの指導をしてくれている。苦手だと感じていることも、その道のプロのアドバイスでわりと簡単に解決策が見えてくるのかもしれない。
こんな話を友人にしたところ、ちょうど職場に声が大きくて困っている人がおり、もう少し声量を落としてと言ったけど声質的に無理みたい、といったことを聞かされた。そういうパターンもあるのかと私は思わず笑ってしまった。
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