学生時代に彼女と友人になっていただろうか。否。とてもじゃないが近づくのも怖かっただろう。

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彼女とはワーキングホリデー中に出会った。当時のフラットメイトが偶然日本人で、高校時代の同級生を紹介してくれた。彼女は私が渡航してくる一日前にこの国にやってきたとのことだった。彼女の目的もワーキングホリデーだった。

初めて会った日、カフェでギョッとしてしまった。完璧にスタイリングされた髪の毛、これでもかと上を向いているまつ毛、陶器のような白い肌。美しい人だった。と同時に学生時代は確実にギャルだっただろうなという印象も受けた。

後ほど交換したSNSで過去の投稿を拝見した。私の想像するTheギャルという感じの写真ばかりだったので「ですよね」と自分の中で納得した。

私はというと、その対極である。今でこそ見た目にはそこそこ気を使っているが、学生時代は「地味」を体現したような人間だった。田舎の自称進学校で勉強と読書に打ち込む、メイクなんてした日には教師から大目玉を喰らうような環境で育った私には彼女の学生時代のエピソードを聞いたり当時の写真を見せてもらうたびにまるで別世界にいたんだなと思った。

都市伝説と思っていたルーズソックスを、実際に学生時代履いていたと聞いて、びっくりして笑っちゃったのもいい思い出である。

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私たちは、ワーキングホリデーを始めた日が1日違いだ。慣れない環境のなかで、住むところ働くところを探し、一から生活を整えていくというのは私の人生の中でわくわくした経験の一つである。しかしそれと同時に心細かったのは事実だ。

でも彼女がいてくれたから、日本に帰りたい気持ちを抑えることが出来た。どれだけ辛いこと悔しいことがあっても、話を聞いてくれる彼女の存在はありがたかった。

そんな彼女から旅行に誘われた。陰キャ寄りの性格の私は友人と旅行に行くのが苦手だ。実際に今まで数回ではあるが友人と旅行をした。そのたびに気疲れしていた。そこからもっぱら一人旅派である。ただこれも何かのご縁。せっかくワーキングホリデーに来ているのだから苦手なことを克服するのもアリだと思い、彼女と二人で旅行に出かけた。

これが始まりだった。そこから私と彼女は、ほぼ月に2回という怒涛のスケジュールで近隣の国々へ旅行に出かけるようになった。

派手な見た目とは裏腹に、彼女の性格は繊細で、周囲の人間に非常に気を使ってくれるタイプだった。入念な計画を立てる彼女との旅行は私の旅行スタイルと似ていて、正直家族と行く旅行よりも非常に気が楽だった。死に際に人は走馬灯を見るというけど、彼女と見たギリシャでの景色は確実に見るだろうと予想している。

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見た目がギャルっぽくて派手な人には近づかないようにしていた学生時代の私へ。ルーズソックスを履いて、ネイル、メイクもばっちりだった元ギャルと友人になるよ。

現地でこういう友人が出来たんだ、と周囲に話すと、見た目のタイプがだいぶ違うので驚かれる。そのたびに「ですよね」と彼らの驚きに同意する。

慣れない環境で出会ったからこそ絆は深くなり、まったく違う人生を送ってきたからこそ、お互いを「興味深い人間」と思えたのだろう。

人生って何が起こるかわからないとよく言ったものだ。本当にそのとおりである。