私はこの社会を生きるのに向いていないな、とつくづく感じる。これは元々そういう人間だからだろうか、それとも、留学やら大学院やらで社会に出るのが遅かったからだろうか。

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大学院卒や留学経験あり、というと華々しい働き方をしていると思われるだろう。
しかし、私は大手企業で働いているわけでもない。安定した公務員でもない。
ある研究機関で、契約社員という雇用形態で働いている。

おまけに現在、私は休職中だ。しかも3回目。
1回目は、新卒で入った会社でのパワハラが原因。
2回目は、今の職場で。本来複数人で協力すべきプロジェクトで私だけ仕事を抱え込みすぎて、倒れてしまった。
復職したものの、それ以降職場での仕事に疑問を抱くようになってしまい、その不安に耐えられず3回目の休職をする運びとなった。

今の職場では、きっと体調不良が再発するだろう。
そう思い、転職活動を始めてみるも、書類を用意する時点で手が止まってしまう。
私を受け入れてくれる会社なんてあるのだろうか。休職経験のあるアラサーの自分を、雇ってくれる会社なんてあるわけない。

そんなネガティブな思考を止めずにはいられない。「留学経験あり」「大学院卒」という肩書きだけが、鈍く輝いている。

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学歴が低いことに覚える不満や不安を「学歴コンプレックス」と呼ぶのなら、私の場合は学歴があるにも関わらず劣等感を感じる「逆学歴コンプレックス」と言えるのかもしれない。

大学院を含め、学生生活はとても充実していた。研究や留学、サークル活動など、興味のあることにとことん挑戦してきた。いつも等身大の私でいることができた。

この大学を選んで本当によかったと心から思っている。

しかし、社会に出てからは、学歴を通して私という人間を見られるようになった。

新卒で入社した会社では、大学院卒ということを過剰に囃し立てられた。「どんな勉強していたの?」「家族にどんな教育をしてやればいい?」などと聞かれた時はうんざりした。そんなの本人次第じゃないか。

一方で、腑に落ちない、納得いかないことを尋ねると、嫌な顔をされた。パワハラを訴えても、誰も聞く耳を持たなかった。

パワハラに負け、休職したものの、復職してからはそのフラッシュバックで苦しんでいた。

精神的に耐えきれず、その会社を辞める時、年配の女性社員に言われた。

「高学歴なのに、情けない」

その瞬間、私は「逆学歴コンプレックス」を自覚した。
私は高学歴なのに、仕事で評価されない。
私は高学歴なのに、パワハラに負けてしまった。
私は高学歴なのに、傷から立ち直ることができない。

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現職は研究機関ということもあり、学歴を気にすることが少なくなった。一方で、大手企業や安定した職場で働く同期のSNSを見てつらくなることもある。

今の職場では、研究に関わる業務ができると思い、当初はやりがいを持って働いていた。

しかし、次第にプロジェクトに係る業務を任せっきりにされたり、単調で何も変化のない仕事を担当することになったりと、それぞれ別の意味で働くことがしんどくなった。

そろそろ、この職場も辞めようかと考えている。
大学院を出ていても、留学経験があっても、私の学歴は、肩から宙ぶらりんに垂れ下がっているだけだ。

もう学歴に縛られたくない。肩書きにするには荷が重いから、単なる「特徴」として捉えた方が気が楽だ。

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休職中に思う。学歴を気にしない生き方のほうが、私には楽なのかもしれない。
学生時代のような等身大の自分を取り戻したい。
もし転職するのなら、学歴にこだわらない職種を選ぶのもありだと最近思う。

私の学歴は、学生時代頑張ってきたという証だ。

それを誇りに思うことを忘れさえしなければいい。

私は「留学経験あり」「大学院卒」という特徴を持った人間として、生きづらさを抱えながらも、等身大の自分でこの社会を生きていきたい。