「無駄に勉強代がかかるね」バカにされた私が武器を手にするまで

「自分は社会では認められない」 そんな思いに、ずっと苦しんできた。
人を驚かせるような学歴も、自慢できるようなキャリアも、特別な資格もない。
自分の履歴書を見るたび、これまでを責めてモヤモヤしていた。……1年前までは。
私はいわゆる、学歴・経歴コンプレックスを抱えていた。
他人の経歴を聞くだけで、胸がざわつく。結婚式で新郎新婦の学歴や仕事が紹介されると、自身の経歴の虚しさや平凡さに打ちのめされて、ヤケ酒をしたことだってある。
しかし、決して勉強やキャリアをサボっていたわけではなかった。
むしろその逆で、受験も部活動も就活も、誰よりも一生懸命だった。
大学時代は「これ以上勉強しなくても大丈夫だよ」と教授に言われたほどだ。
「これだけ頑張れば、私の履歴書は華やかになる!」
無心になって取り組んでいる時はそう思っていた。
それでも努力は報われなかった。
受験では希望校から相次いで不合格通知が届いた。浪人はできなかったため、学費が安かった大学に進学。
学歴のギャップを埋めようと、必死に勉強した。首席レベルまでいったものの、就職活動では学歴フィルターで何度も跳ね返された。
企業見学で学校名を言った途端に、担当者の目が一瞬で冷たくなったのを覚えている。
なんとか入れた会社では「資格で勝負!」と意気込んで、資格取得に専念した。
対策本や講座に課金し、休日もひたすら勉強。しかし何度挑戦しても、結果は不合格。
「無駄に勉強代がかかるね」
当時の上長の一言で、私が積み重ねてきた努力は、一瞬で無いものにされた。
努力をしても結果を出せない自分。自責しては、隣にいる主人や周りの経歴を比較する。
負のループに取りつかれてしまった。
自分は何を間違ってしまったんだろう。誰よりも頑張っていたはずなのに......、と自責する日々。
コンプレックスから脱出するには、学歴や努力から距離を置くのも正解かもしれない、と思い、当時無心でやっていた勉強や好きで練習していたことなど、全てやめてしまった。
そのときの私は、本当に無の人間になりたかった。
努力から距離を置いていた1年前、突如派遣先の契約も終了した。 私は、足元しか見られなくなってしまった。
死んだ目でSNSを眺めていたところ、オンラインキャリアスクールの広告が現れた。
「未経験でもキャリアチェンジできる」
「実績ゼロでも、たくさんの経験を詰める!」
普段の自分であれば、謳い文句を流していただろう。
しかし、ボロボロだったその時だけは心が引き寄せられた。
私には何もない、しかし何もないからこそ、これから何かを積み重ねることができるかもしれない……!
自分の心に再び火が灯った。
その時学歴や経歴に縛られていた私が、初めてそのコンプレックスを可能性として捉えることができた。
帰宅してすぐに主人に相談し、年明けに入会。
それからほぼ毎日、パソコンに向かってもくもくと勉強をしている。出産直前も勉強していたくらいだ。
「バカにされた自分を乗り越えてやる!」がエンジンとなり、私は動いている。
知識が増えて課題を乗り越えるたび、自分の能力に対する自信が少しずつ芽吹いてきた。
虚しくて見れなかった履歴書に書けそうなこと、更には書き加えたいことも見つかってきた。
過去にクヨクヨ悩んでいても仕方がない。これからの自分を作る時間の方が価値がある。
そう思えるようになったのは、私が学歴・経歴コンプレックスだったからだ。
コンプレックスは決して悪いものではない。
むしろ自分の伸びしろを作る最大の武器だと思っている。
私は学歴・経歴コンプレックスという武器で、次こそ自分の履歴書を誇れるものにしていきたい。
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