私は年を重ねるにつれて友人が増えたタイプだ。
転園、転校し、なぜか自宅は同級生から遠かったので思うように友人ができなかった。
しかし、高校、大学、社会人と少しずつ、少しずつ友人が増えてゆき、社会人になってからは思いもよらない友人と会うことが増えた。

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高校3年生から大学生まで完璧主義で常に緊張していた私は、「休日は将来に投資すべき」という価値観を持っていた。

どんな隙間時間も読書をし、バイトや授業のない日は有意義なイベントに参加し、貯めたお金は海外での勉強に使い、いわゆる「意識高い系」に半分足を突っ込んでいたと思う。
都心の大学に通っていたものの、花見も、合宿も、BBQも、スノボも、飲みゲーも、オールも経験がない。
ただ会うだけの友人というものは最低限でよく、正直友人は選んでいた。
新たに友人とご飯に行くなら、就活や将来の話できそうなタイプや自分の考えの深いことを話せるタイプがよかった。

英語を使いたいと始めた学生が多めのバーでバイトをした時は、深夜営業をした直後の飲み会の誘いや中身のないグループLINEのやり取りが煩わしいという理由ですぐに辞めた。
お酒なんて体と口座にとっては悪役だから、お得な平日ランチに会える子が良いという厳しい制限ではあったものの、幸いにも課外活動を重ねる中で私の求める友人ができ、彼氏もでき、次第に中学校と高校の友人とは疎遠になってしまった。

しかし、せっかく仲良くなれた友人がいたのに、彼氏やそのコミュニティに飛び込みすぎてSNSにたくさん載せたり、就活がうまくいかず誰にも会いたくなくなってInstagramのアカウントを削除して誰とも連絡をとらないようにしたり。失った友人はかなりの数だと思う。

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しかし大学卒業間際に私に転機が訪れる。

リゾートバイトで大きめのお金を手にしたタイミングで彼氏と別れ、新しい彼氏欲しさに始めたマッチングアプリを通じて飲みを覚え、ただただ目の前のことや中身のない会話が楽しくて仕方がないことに気が付いた。

そのまま社会人になって突然ストレス過多になった私の価値観は「つべこべ言わず、休日は楽しみたい」へと変貌を遂げた。
休日は友人と中身のない会話やおしゃれなカフェや飲みに使いたいと思うようになったのだ。

そして、少しずつ友人に連絡を取り始め、今では愉快な友人とともに大人になって休日をとても楽しんでいる。
そして、どうしようもなく、幸せだ。人生が豊かになったと心から感じる。
おいしいものを飲んだり食べたり、くだらない話で息が止まるほど笑ったり、遊びに行くために新しくお洋服を買ったり。

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私の人生の幸せに必要な価値観とは実は「休日は将来に投資すべき」ではなく「つべこべ言わず、休日は楽しむものだ」ということにようやく気付けた。

だから、大人になった私には今、大学時代には考えられなかったような友人がたくさんいる。
そして、彼ら、彼女らが私の人生をより楽しく、豊かにしてくれている。
一旦冷静に考えてみてほしい。どの学校でも、どの習い事でも、どのコミュニティでも、出来事とセットで友人を思い浮かべないだろうか。

特に私は10代前半まで友人がいなかったから、友人の大切さはものすごくわかる。
唯一無二の友人たちが、私1人じゃ生み出せない笑いや思い出、意見、毎週の弾けるような時間をくれる。
大学時代と同じことを繰り返さないように、いつでも誘ってもらえるようにInstagramには彼氏(現在の夫)のことは載せないようにしてみたり、勢いで新卒の会社を辞めて無職の時こそ友人と会うようにしてみたり、積極的に友人のSNSの投稿に反応したり細かい工夫をするようにしている。

それが功を成して、大人になった今でも10年前通っていた高校の友人と新たに仲良くなれたのだと思う。

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強調しておきたいのは、意識高い系風大学生をしていた私が「早く彼氏を作るためのマッチングアプリ」がきっかけで価値観が変わったこと。

イベントでも書籍でもなく、まさかのマッチングアプリでひっくり返されるなんて。
もしマッチングアプリをやっていなかったら私はきっと今でも「休日は将来に投資すべき」と考えてきていただろう。それも悪くないけど。

だけど今はとっても幸せだ。きっかけはどこに転がっているかわからない。
そして、特筆しておきたいのは私は他人からの言動に大きく影響を受けるタイプだ。

これまで私が頑張れたのも、やりたいことを見つけられたのも、泣き止むことができたのも、新しい選択肢を提示してもらったのも、全て友人のおかげ。
だからこそたくさんの友人に会い、たくさん楽しんで人生の幅を広げていこうと思う。

まさに「つべこべ言わず、休日は楽しむものだ」。
最後に。私は子供を望んでいないから、子育ての話は将来できない。また、周りで結婚、出産が増えてきたこの人生の境目では、さらに付き合いは減るだろう。
学校のように毎日会えないし、共通の休みなんてないから、より一層、これからの友人は儚くなってゆくと思う。

だから私は大人になった今だからこそ、友人と楽しめる心とスケジュールの準備はできている。
大人になって仕事や色々悩みが尽きないからこそ、休日にふらふらと、無駄な話をしながら食事できるのはとても幸せなことだ。
来週行く季節外れのビアガ、そして今年で付き合いが12年目に入る友人との下町ディナーも楽しみだから今週も何とか乗り切れそう。
高校時代に仲が良く、大学入学を機に疎遠になって(して)しまった友人の出産を機に連絡をとり、遊びに行く約束もある。

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大人になってから友人ができた私は、これからもたくさんの友人と楽しめるよう、話せることが増えるよう、いつになっても魅力的ないち友人でいられるよう、私自身もいつまでも魅力的でありたいと思う。

それが私にとって1番の投資だから。