高校時代の文理選択。文系を選ぶか理系を選ぶかで、受験科目が変わる。ひょっとしたら将来も変わるかもしれない。当時の私は医療業界に進みたいと考えていたため、理系を選択した。
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しかし、自分は本当に医療がしたいのか、そもそも適性があるのか、今理系を選んだとして、大学で他の学問を学べなくなるのはもったいなくないか。せっかく大学に行くなら、文理問わず様々な学問に触れてみたい。
そう考え、入学後に文理問わず学べる学部がある大学への進学を目指した。入試に関しても、センター試験(当時の共通試験)は文系科目を多めに選択し、二次試験は理系向けの科目を選択した。
その学部に入学して悔やんでしまったことも正直あった。周りが優秀な学生ばかりで、常に落ち込んでいた。しかし、私の成績は面白いことに文理の隔たりがなかった。高校時代の私の成績は「理系が得意で、文系は興味があるものの成績はまずまず」だった。大学に入ってみると、得意ではない文系科目でいい成績を残せることもあれば、かつて得意だった理系科目でもギリギリ単位をとれた科目もあった。成績が悪かったことに落ち込むこともあったが、当初の目標通り学べる学問の広さに満足していた。
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問題は就職活動だった。
私が学生だったころは、理系ブームが盛んだった気がする。「理系の人気就職先」「理系の就活」といった進路のためになるものから、「理系学生の生態」「理系男子の理想の相手」などエンタメ的なトピックまで幅広くあった。それが多少影響したのかもしれない。大学3年生で詳細な専攻を選択する際、就活のことも考えて理系科目の多い専攻を選択した。
その流れのまま就職活動を開始した。理系枠のある企業を中心に見ていたが、ピンとこなかった。「とりあえず」の感覚で就活したくなかった私は、挑戦してみたいと思う企業にエントリーしていたが、それでもしっくりこない。理系といっても学生時代の全てを理系科目に注いでいた訳ではなかったから、それが枷となって応募できない企業もあった。
どうしようかと考え、学内の薄暗い場所にある進路コーナーに立ち寄った。椅子に座り、並べられた進路資料をぼーっと眺めていた。表紙が並べられた進路雑誌の中に、理系向けのものがあった。表紙は超美人の女子大生、彼女のプロフィールには有名大学の理系学部所属と書かれていた。気になってバックナンバーを見たところ、どれも同じ調子だった。美人高学歴リケジョが積み上げられていた。
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その光景を見た瞬間、私は文理で進路を悩むことを諦めた。キラキラした文系女子はうまく就活できると勝手にイメージしていた。しかし、この雑誌を見た瞬間、理系女子にも同じようなキラキラが求められているのだと悟った。文理とか、何を勉強してきたかとか関係ない。優れた容姿と高学歴と、エントリーシートや面接での多少盛られた自己アピール。これらを兼ね備えた人材が求められているんだ。極端かもしれないがそう悟った。
なんか吹っ切れた。嘘をついたり自分を良く見せることが苦手な私が、就活してもその先でうまく行くとは限らない。だったら、自分の持っているものを存分に発揮できる働き方や生き方がしたい。その感情が留学や大学院進学の後押しをしたのかもしれない。
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「文系と理系、どっち?」と聞かれたら、私は「どっちもです」「融合型です」と答えている。どっちかなんて選べない。実際に大学院では文系と理系の知識を融合させた研究に精進してきた。
今の職場であるミュージアムは文系が多いせいか、理系扱いされることがある。しかし、職場のシステム開発や設備保守をするようなThe 理系な人には敵わない。一方、学問を極めてきた文系研究員の足元にも及ばない。
しかし、業務や研究活動など様々な場面で、文系の職員と理系の業務委託職員の中間に立っている自覚はある。そこに私がいる意味があると信じて働いている。