彼氏と仕事を同時に失い、地元へ逃げ帰った私の目の前に現れたのは

皆さんには、「ずっと特別で忘れられない」そんな人はいるだろうか?
私にはいる。
今年の春、いろいろ重なった結果、同棲していた彼氏と仕事を同時に失い、夏になって私は逃げるように地元に帰ってきた。
数年ぶりに帰ってきたので、次の仕事を始める間に地元の友達と久々の再会を楽しむことがよくあった。
その日もしばらくぶりに会う友人とお酒を呑み、いい気分で外を歩いてた。そのとき、私は彼に出会った。
視界の横から突然現れた彼。
「次、どこいく~?」
そんな感じで馴れ馴れしく話しかけてきたと思う。
地元は結構田舎だから、こんな田舎でもナンパとかあるの…?と思いながら顔を見ると、なんと「ど」がつくほどタイプな男の子が立っていた。
彼氏と別れたばかりで傷心中の私はまんまと彼についていき、その日のうちに関係を持った。
次の日の朝お酒が抜けてから、自分の今の状況を色々話した。
自分のことを話すのは苦手な方だけど、なぜか彼には話せた。
既にほかの人と何か違っていたのかもしれない。
そこから数か月、割と短いスパンで定期的に彼と会っていた。数か月は長いようで短いが、彼を好きになるには充分すぎる時間だった。本当にいつの間にか、好きになっていた。
彼はいつも私を前向きにしてくれた。
傷ついた心、自信を無くした心に彼がかけてくれる言葉はいつも響いた。
彼が大丈夫だよ、というと本当に大丈夫な気がした。
ナンパという始まりだったのに、こんなに素敵な人と出会えたことが素直に嬉しかった。
そんな彼から突然「自分の目標のために頑張ると決めたから、しばらく今の頻度ではあえなくなる」と告げられた。
「自分の目標を達成するためには、何かを犠牲にして時間を作らないと」と彼は言った。
彼はきっと、友達と過ごす時間を犠牲にするという意味合いで放った言葉だろう。
でも私は「私との時間を犠牲にすることが嫌じゃないんだね」と、そんな捉え方しかできなかった。悲しかった。
彼が私に対して恋愛感情なく優しくしてくれているのは気付いていた。
それでも好きになる気持ちは止められなくて続けてきた恋だったが、そろそろ潮時なんだろうと思った。
私ももう20代半ば。夢ばかり見てはいられない。
彼を想うのはもうやめようと決め、今は友人として彼の目標達成を応援している。
そう決めてからしばらくして、SNSでこんな感じの言葉を見かけた。
「人は出会うべき人に、出会うべきタイミングで出会う。それは偶然を装って必然のように始まる。穴の開いた心を癒すように、埋めるように、優しくその人は現れる。だけどその人は永遠にそこにいるとは限らない。役目を終えた人は、静かにあなたのもとから離れていく」
読んでいて涙が出た。すぐに彼を思い出した。彼しか思いつかなかった。
彼を想っている間、本当に苦しい時もあった。つらい日もあった。
でも確実に彼の言葉で私は強くなり、また前を向けた。
すべて無くした私が、明日が来る事を楽しみだと思えたのは間違いなく彼のおかげだった。
彼への気持ちを押し殺したとき、また落ちかけていた私。
でも、この言葉のおかげで彼との出会いとこの気持ちの終わりは私の人生にとって全て必要なものだったと思うことができた。
どん底にいた私を引っ張り上げてくれた彼との出会い。その思い出があるだけで私は今日も、心を強くもって生きていける。
偶然はたまたまを装った必然らしい。そう学んだ2025年の夏だった。
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